日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘラチョウザメ」の意味・わかりやすい解説
ヘラチョウザメ
へらちょうざめ / 篦鱘魚
paddlefish
[学] Polyodon spathula
硬骨魚綱チョウザメ目ヘラチョウザメ科に属する淡水魚。北アメリカのミシシッピ川にすむ。体はサメに似ているが、鼻先が体長の3分の1ないし2分の1ほどへら状に前方へ突出しており、その付け根に小さい目がある。体表面は滑らかで、鱗(うろこ)がない。産卵はミシシッピ川の激流の中で行われる。卵径はおよそ3ミリメートルで、1週間で孵化(ふか)する。仔魚(しぎょ)は透明で、鼻先が伸びていない。体長4センチメートルになると、およそ7ミリメートルの鼻が出現する。7、8年で10~15キログラムになり成熟する。普通、体長は1.8メートル、体重84キログラムほどになるが、最大体長3.6メートルに達する。口をいっぱいに開いて泳ぎ、おもに小形甲殻類やプランクトンをえらで漉(こ)して食べる。
肉は近年になって利用されるようになった。緑黒色の卵はアメリカ産のキャビアになる。幼魚は飼育観賞魚として人気がある。種の存続について危惧種(きぐしゅ)に位置づけられている。近縁種のハシナガチョウザメは黄河(こうが)と揚子江(ようすこう)にすむが、絶滅危惧種である。
[尼岡邦夫]