日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘンペル」の意味・わかりやすい解説
ヘンペル
へんぺる
Carl Gustav Hempel
(1905―1997)
ドイツ生まれの科学哲学者。ベルリン大学で学位Ph. D.を得る。ライヘンバハ、シュリック、カルナップなどの影響を受け、論理経験主義者として出発した。1937年にアメリカへ亡命し、1955年以降はプリンストン大学の哲学教授。晩年はピッツバーグ大学の哲学教授。業績は多岐にわたるが、今日までもその影響が残っているのは、オッペンハイムPaul Oppenheim(1885―1977)とともに展開した科学的説明についての理論である。これは、「演繹モデル(えんえきもでる)」といわれ、一時は科学的説明についての定説になりかけた。しかしその後このモデルは、ファイヤアーベントPaul Feyerabend(1924―1994)によって厳しく批判された。おもな著作に次のようなものがある。『新しい論理学の下で見られたタイプの概念』(1936、オッペンハイムと共著)、『経験科学における概念構成の基礎』(1952)、『科学的説明の諸問題』(1965)、『自然科学の哲学』(1966)など。
[黒崎 宏 2015年10月20日]
『黒崎宏訳『自然科学の哲学』(1967・培風館)』▽『長坂源一郎訳『科学的説明の諸問題』(1973・岩波書店)』