日本大百科全書(ニッポニカ) 「ライヘンバハ」の意味・わかりやすい解説
ライヘンバハ
らいへんばは
Hans Reichenbach
(1891―1953)
ドイツ、ハンブルク生まれの科学哲学者。1920~1930年代を通じて、論理実証主義の運動と密接なかかわりをもち、1938年にアメリカに渡って、科学哲学の発展に大きな役割を果たした。彼の仕事は科学哲学のほぼ全域にわたっている。科学の方法論においては、相対頻度の極限として確率を解釈することによる帰納法の基礎づけを提唱した。相対性理論を中心として空間・時間の諸問題を検討した『空間と時間の哲学』Philosophie der Raum-Zeit-Lehre(1928)は、この分野の古典である。量子力学の基礎においては、真偽のほかに「不定」という値をもつ三値論理による解釈を提起した『量子力学の哲学的基礎』Philosophical Foundations of Quantum Mechanics(1944)がある。
[飯田 隆]
『H・ライヘンバッハ著、市川三郎訳『科学哲学の形成』(1954/新装版・1985・みすず書房)』▽『H・ライヘンバハ著、藤田孫太郎訳注『物質について』(1958・大学書林)』▽『H・ライヘンバッハ著、石本新訳『記号論理学の原理』(1982・大修館書店)』