改訂新版 世界大百科事典 「ベッコウバチ」の意味・わかりやすい解説
ベッコウバチ (鼈甲蜂)
pomplid wasp
膜翅目ベッコウバチ上科Pomploideaの昆虫の総称。体長7~30mm。若干の寄生性のものを除いていずれの種も,クモを狩って房室に蓄え,幼虫を育てるカリバチ(狩蜂)である。巣としては,木の洞,石垣の隙間,地表の小さな空洞や穴などを利用するものや,土中にみずから坑を掘る種類などがある。ヒメベッコウバチ属Auplopusの種だけは,ベッコウバチとしては例外で,泥でビール樽形の容器をつくったり,竹筒に泥で仕切った房室を設ける。いずれの場合も,ベッコウバチは,他のクモを狩るハチたちとは違って,おのおのの幼虫には餌をただ1匹だけ与えるのが特色である。
夏の夕刻などに,郊外の踏み固められた赤土の道路わきなどで,獲物をかたわらにおいて,坑道を掘っている大型のベッコウバチを見かけることもまれではない。このように,オオモンクロベッコウなど地上営巣性のベッコウバチのほとんどは,造巣に先だって狩りをし,獲物の脚や触肢をくわえて後ろむきに運搬しながら,適当な造巣場所をさがす。ヒメベッコウバチの仲間だけは,まず巣房の用意をする。獲物の脚を全部切断し,あおむけにして,逆方向にむけて馬乗りになり,腹端にある吐糸管をくわえて前進するといわれている。
執筆者:桃井 節也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報