ベビーメタル（読み）べびーめたる（その他表記）BABYMETAL

知恵蔵

ベビーメタル

日本の女性アイドルグループ、メタルダンスユニット。ボーカルのSU-METAL(スゥメタル、中元すず香、1997年12月20日生まれ、広島県出身)、スクリームを担当するYUIMETAL(ユイメタル、水野由結、99年06月20日生まれ、神奈川県出身)、MOAMETAL(モアメタル、菊地最愛、99年07月04日生まれ、愛知県出身)の3人で構成する。「メタル(ヘビーメタルの俗称で、ギターやドラムなどによる重厚感のある演奏が特徴)とアイドルの融合」という、まったく異なるジャンルを組み合わせた楽曲や激しさと可愛らしさのギャップで魅せるライブパフォーマンスが特徴だ。本格的なメタル演奏に乗せてSU-METALが高音で歌い、YUIMETALとMOAMETALが可愛らしい声で合いの手を入れ、激しいダンスを披露するパフォーマンスは、アイドル好きの若者やメタルを好む中年層など幅広い年代、ジャンルの人々から人気を集めている。
日本国内よりも海外での人気が先行しており、日本の「カワイイ文化」の一つであるゴシック・アンド・ロリータを連想させる黒と赤が基調の衣装を着た3人のパフォーマンスやバックバンドの高い演奏技術が注目され、日本語の歌詞がそのまま受け入れられている。米国や欧州などでワールドツアーを行うほか、現地のロックフェスなどにも出演する。2016年6月、英国のロック専門誌「Kerrang!(ケラング)」が主催する「Kerrang! Awards 2016」でベストライブバンド賞に輝くなど、その評価も高い。所属事務所はアミューズで、所属レコード会社はトイズファクトリー。
メンバーの3人はメタルの神「キツネ様」によって告げられた使命「メタルで世界を一つにする」に従うというコンセプトで活動し、ライブなどではキツネの影絵サイン「キツネサイン」を多用する。2010年に、3人が所属していた女子小中学生限定のアイドルグループ、さくら学院の派生ユニットとして結成された(現在は3人とも同学院を卒業)。グループ名は「ヘビーメタル」をもじって付けられた。
11年10月、シングル「ド・キ・ド・キ☆モーニング」でインディーズデビュー。動画投稿サイトで公開されたミュージックビデオは海外でも大きな反響を呼び、コメント欄には海外からのコメントが多数並んだ。当初のライブはカラオケで行われていたが、12年10月、東京で行った初の単独ライブのアンコールで、白い衣装を着て顔にメイクを施したミュージシャンらによる「神バンド」が登場し、生演奏によるパフォーマンスが披露された。13年1月に「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でメジャーデビューを果たす。同5月に大阪と東京で行われたライブツアーには神バンドが同行し、全曲を生演奏で披露した。14年2月に発売されたファーストアルバム「BABYMETAL」は、日本人として史上最年少(平均年齢14.7歳)で米ビルボードの5部門にランクインし、iTunesでは米英など7カ国でロック部門の10位以内に入った。同月に動画投稿サイトにアップされたアルバムの収録曲「ギミチョコ!!」のミュージックビデオは、16年6月時点で5400万回以上再生されている。同3月、日本武道館で単独公演を行い、単独での女性最年少記録を更新した。同7月からは米英や日本など6カ国を回る初のワールドツアーを行い、その期間中に英メタル専門誌「METAL HAMMER(メタルハマー)」が主催するインターネットの投票企画で日本代表に選ばれ、優勝した。また同7、8月には米国の有名歌手、レディー・ガガの北米ツアーに前座として帯同し、注目された。15年5月からは米英やメキシコ、日本など10カ国を回る2度目のワールドツアーを行った。
16年4月に世界同時発売したアルバム「METAL RESISTANCE」は英アルバム・チャートで15位を記録し、米ビルボードのアルバム・チャートでは初登場39位と、1963年に14位となった坂本九のアルバム「スキヤキ・アンド・アザー・ジャパニーズ・ヒッツ」以来53年ぶりにトップ40に入った。同月から7月まで、米英仏や日本など8カ国を巡る3度目のワールドツアーを行う。初日の英ロンドンでは、ビートルズやローリングストーンズ、マドンナといった著名なアーティストらがライブを行った会場、SSEアリーナ・ウェンブリーで日本人初の単独ライブを成功させている。

(南　文枝　ライター／2016年)

出典　(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」