カラオケ(読み)からおけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラオケ」の意味・わかりやすい解説

カラオケ
からおけ

カラオケは、そもそも音楽業界の用語で、歌手の練習やレコーディング時に使う伴奏だけを録音したテープレコードを、「空(から)のオーケストラ」の意で、「カラオケ」とよんだ。それが、1971年(昭和46)に神戸市においてバースナックの客向けのカラオケ装置が登場、人気を得て70年代中ごろには全国に普及し、カラオケということばが一般に浸透した。

 この当時のカラオケは、8トラックのオーディオ・テープが主流で、利用者は歌詞カードを見ながら歌うスタイル。それが、1982年にLDレーザーディスク)カラオケが登場、「絵の出るカラオケ」として人気を得て、カラオケはテープからディスクの時代となる。LDカラオケは、モニターに映し出される背景映像の魅力に加え、色変わりする歌詞テロップによってテープ時代よりも一段と歌いやすくなり、それがカラオケ利用者の拡大に大きく貢献した。

 1992年(平成4)には通信カラオケが登場。MIDI規格(Musical Instrument Digital Interface、デジタル方式の電子楽器を相互連動させるための統一規格)の電子音源を使い楽曲データを電話回線で各端末機に配信するシステムで、LDカラオケに比べ圧倒的に豊富な曲数と新曲提供の早さを実現し、とくに若者層のカラオケ需要を拡大した。90年代中ごろには、カラオケの主流はLDから通信に移った。

 一方、1986年に、岡山県において音もれのしにくい船舶用コンテナを利用したカラオケボックスが登場、手軽に低料金でカラオケが楽しめるとともに、個室内で他人を気にせず仲間だけで楽しめるという要素も相まって人気を博し、80年代末ごろから全国に急速に普及した。バブル経済崩壊後の景気後退下の消費ニーズ「安・近・短」をとらえ、90年代中ごろまで店舗数の拡大が続いた。

 ただ、1990年代後半になると、カラオケボックスは供給過剰となり店舗数は減少に転じる。また、バー、スナックなどのカラオケ設置店も景気低迷の影響から減少傾向が続く。とはいえ、全国にカラオケボックスは1万2844店、カラオケ設置のバー、スナックなどは27万0095店、カラオケ導入のホテル・旅館等は1万5426軒(2000年3月、JASRAC調べ)あり、またカラオケの参加人口も5060万人(1999年、『レジャー白書2000』)にのぼっており、カラオケはたんなるブームではなく国民的娯楽として定着している。また、カラオケは海外にも輸出されており、欧米ではMC(ミュージック・キャスター、司会者)を置いて客にカラオケを楽しませるパブなどが人気を得ている。韓国や台湾等にはカラオケボックスの業態もある。KARAOKEは、現在では海外でも通じる国際語になっている。

[多田義則]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カラオケ」の意味・わかりやすい解説

カラオケ
karaoke

歌謡曲などの伴奏だけを演奏し,利用者がこれに合わせて歌えるようにした機械,またはこの機械を使って歌うこと。日本語と英語の合成語で,歌のない (空の) オーケストラの意。 1970年代初めに神戸の歓楽街で生まれ,会社員の間で人気を博した。 1980年代末にはアメリカ国内でも流行し,アジア各国にも広く普及した。当初は酒場などに設置されていたが,1978年に家庭用カラオケが発売され,1980年代には専用の小部屋を時間貸しするカラオケ・ボックスが登場,手軽なレジャーとして定着した。機材も,初めは伴奏テープだけだったが,1980年代,ビデオディスクで画面に歌詞や映像が流れるようになり,1990年代には通信カラオケが登場して,店側がソフトを用意する必要がなくなった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「カラオケ」の意味・わかりやすい解説

カラオケ

伴奏のみの音楽に合わせて歌うこと,またはそのための装置。〈空のオーケストラ〉の略語。歌手の練習用テープがバーやスナックで客の伴奏用として使われたのが始まりで,家庭用機器と〈カラオケ・ボックス〉と呼ばれる商業施設の普及により,1980年代以降手軽な娯楽として定着した。近年では海外でも盛んである。
→関連項目歌謡曲

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のカラオケの言及

【オーディオ】より

…そして,今までレコードや放送の既成のプログラムソースを聴くだけの受身のオーディオから,SL機関車の音とか,野鳥の声などいろいろの音を録音して楽しむ〈生録(なまろく)〉といわれる分野が生まれた。また,歌唱や楽器演奏は本来オーディオとは別の趣味の分野とされていたが,〈カラオケ〉といって伴奏音楽をオーディオ装置で再生し,歌を歌って楽しむことが流行し,新しいオーディオの一分野となった。1980年代になるとディジタル技術が進展をみせ,レコード分野では1982年にコンパクトディスク(CD)が商品化され,やがてLPレコードに取って代わる成長を果たした。…

【歌謡曲】より

…再び演歌がテレビに登場する一方,演歌が東南アジアに進出しはじめ,1980年代には,千昌夫の《北国の春》が中国,台湾,香港等でそれぞれの国語に翻訳されて歌われた。これは,東・西アジアで活躍する日本の商社マンあるいは観光客が各地にカラオケをもちこんだことによると見られるが,それはまた中高年層がいかに演歌を好んでいるかを示す好例ともなっている。若い時代にはポップス系を好んでいた人も,中高年で演歌へ移行してゆくわけで,伝統的音感覚の根強さがうかがえる。…

【スナック】より

…以来,スナックは昭和40年代に全国的に急増し,酒場といえばスナックを連想するほどに一般化した。なお1973年に発生した石油危機以後は,カラオケと呼ばれる歌の伴奏用テープが急速にスナックに普及し,それに合わせてしろうとの客が,エコーの効いたマイクで陶然と歌をうたう風景が一般化するようになった。【加藤 秀俊】。…

※「カラオケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android