日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロリータ」の意味・わかりやすい解説
ロリータ
ろりーた
Lolita
アメリカの作家ウラジーミル・ナボコフの長編小説。1955年パリで出版され(翌年発禁)、旅行者の間で評判になり、1958年アメリカで出版され、たちまちベストセラーとなる。ハンバート・ハンバートは義理の娘のドローレス・ヘイス(ロリータ)の美しさにひかれ、妻を自殺同然の自動車事故に走らせ、ロリータとの愛の逃避行をアメリカ中に繰り広げる。だがロリータは途中で逃げ出す。ハンバートは彼女を奪ったクィルティを探し出して射殺し、投獄され、そこで自分の愛を回想する。その手記が『ロリータ』で、いわば、現実と空想のないまぜになった、美へのあこがれと倒錯した性と窃視嗜愛(バヤーリズム)の物語。ニンフェット、ロリータ・コンプレックスなどのことばがここから生まれた。
[大津栄一郎]
『大久保康雄訳『ロリータ』(新潮文庫)』