改訂新版 世界大百科事典 「ベルベデーレ」の意味・わかりやすい解説
ベルベデーレ
belvedere
よい眺めないし展望室を意味するイタリア語。建築用語としては建物の上階ないし最上階に設けられた見晴し台,屋根付き屋上テラスをさす。中世末からルネサンスにかけてベネチアの住宅で流行し,他の都市,諸邦に広まった。ローマでは1485年教皇インノケンティウス8世によってバチカン丘に建てられたビラが,見晴しのよい上階の開廊にちなんで〈ビラ・ベルベデーレ〉とよばれ,最初の固有名詞となった。16世紀初め,ブラマンテはこのビラと教皇宮を2本の長廊で結び,その内側に壮大なベルベデーレ庭を計画した。庭を囲むバチカン美術館所蔵のアポロン像は〈ベルベデーレのアポロン〉の名で知られる。アルプス以北におけるベルベデーレの最初の例はプラハの〈夏の宮殿〉(1536)にみられ,バロック,ロココ時代にはドイツ,オーストリアの宮殿建築に主階中央部の眺望広間が好んで用いられた(ビュルツブルク司教館)。なかでも,ヒルデブラントがウィーンに設計した皇子オイゲンのベルベデーレ宮殿は有名である。
執筆者:日高 健一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報