ニガヨモギを主体とする各種の草根木皮の香味をワインで抽出し、濾過(ろか)した酒。わが国の酒税法上は甘味果実酒に入る。
[原 昌道]
ベルモットの歴史は古い。ギリシア時代の有名な医者であるヒポクラテスが、ワインにシナモンと蜂蜜(はちみつ)を入れて患者に飲ませたのがこの種のワインの始まりといわれる。その後17世紀にドイツでワインにニガヨモギの香味を浸出させたものが飲まれるようになり、ベルムートWermut(ニガヨモギのドイツ語)と名づけられた。これがラテン語に変わり、現在のベルモットになった。
[原 昌道]
使用される草根木皮はニガヨモギを主体とし、苦レモン、シナモン、ウイキョウ、チョウジなど20種類以上のものがある。これらの薬草をワインにつけ込んで香味づけを行うのであるが、それには、〔1〕ワインに直接草根木皮を浸して浸出させる方法、〔2〕草根木皮を蒸留してエキスのみをとる方法、〔3〕蒸留酒に草根木皮を浸して香味を抽出し、これをワインに加える方法などがある。香味をつけられたワイン(ブランデーや糖類を加えて補強してある)は濾過し、熟成させたのち出荷する。
[原 昌道]
ベルモットの主要生産地はイタリアとフランスで、前者は北イタリア、ピエモンテ地方のトリノを中心につくられ、後者は南フランスのアビニョンからマルセイユに至る地域から産出される。
酒質は、イタリアン型が濃色甘口であるのに対して、フレンチ型は淡色辛口である。アルコール分は14~20%含まれる。有名なベルモットとしては、イタリアンのチンザノ、マルティーニ、ガンシア、フレンチのノワイィ・プラがある。そのほかベルモットとややタイプを異にするが、強壮的なワインとして次のようなものがある。〔1〕デュボネ 白ワインにキニーネを主とした各種生薬(しょうやく)を浸してつくった酒。フランスのジョセフ・デュボネが、スペイン国境で飲まれていたものをつくりかえたといわれる。〔2〕ビル ワインに蜂蜜、キナの皮を加えてつくったフランス産の酒。色が濃く、辛くてやや苦味がある。〔3〕キナ・リレ ソーテルンの甘口ワインにキナなどの生薬を加えて香味を浸出し、アルマニャックで強めた酒。〔4〕サン・ラファエル キニーネの入ったフランス産ワイン。赤と白がある。〔5〕アメール・ピコン ワインにオレンジの皮やキニーネを用いるほか、アフリカ、アルジェリア産の薬草を原料としてつくられる。アメール(苦い)という名のとおり苦味の非常に強いビタース(苦味酒)の一種である。フランス人ピコンがこれを創製したのでこの名がある。〔6〕ウインカニス ワインに肉エキスと麦芽汁を加えてつくったイギリス産の酒で、暗紅色の甘い酒である。
[原 昌道]
強化ワインの一種。16世紀にライン・ワインにニガヨモギ(ドイツ名でWermut)の花で香りをつけたのに始まるとされる。ワインを基酒とし,これにニガヨモギのほかシナモン,コリアンダー,ウイキョウその他多くの香草を配し,スピリッツを加えてアルコール分17~20%に強化する。このためリキュールに分類されることもある。辛口(白),甘口(赤)があり,前者はワインの風味に力点をおき,後者にはより多く香草類の風味が生かされている。フランス,イタリアが主産国で,辛口はフランス,甘口はイタリアの伝統とされる。食前酒またはカクテルベースとして多く用いられる。
執筆者:大塚 謙一
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…竹葉青酒(ちくようせいしゆ)と呼ぶのは,白酒にタケの葉のほかに十数種の生薬(しようやく)を浸漬(しんし),その成分を浸出させたのち,糖液を加えたもので,汾酒を基酒に用いた山西省杏花村の竹葉青は全国名酒である。白酒以外にブドウ酒を基酒としたものも多く,その中では烟台の味美思(ベルモット)は全国名酒である。薬酒は,基酒に生薬を加えて成分を浸出させたもので,古来多くのものがつくられており,世界各地に輸出されているものもある。…
※「ベルモット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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