ベルモット(読み)べるもっと(その他表記)vermouth フランス語

デジタル大辞泉 「ベルモット」の意味・読み・例文・類語

ベルモット(〈フランス〉vermouth)

ぶどう酒ニガヨモギなどの成分を加えたリキュール。辛口(フレンチ)と甘口(イタリアン)があり、食前酒カクテルとする。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ベルモット」の意味・読み・例文・類語

ベルモット

  1. 〘 名詞 〙 ( [フランス語] vermout(h) )[ 異表記 ] ヴェルモット 洋酒の一つ。白ぶどう酒を主原料にし、ニガヨモギなどの薬草類を浸して作ったリキュール。食前酒やカクテルとする。
    1. [初出の実例]「ビールにブランデーベルモット」(出典:演歌・オッペケペー歌(1887‐92頃)〈川上音二郎〉)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベルモット」の意味・わかりやすい解説

ベルモット
べるもっと
vermouth フランス語

ニガヨモギを主体とする各種の草根木皮の香味をワインで抽出し、濾過(ろか)した酒。わが国の酒税法上は甘味果実酒に入る。

[原 昌道]

由来

ベルモットの歴史は古い。ギリシア時代の有名な医者であるヒポクラテスが、ワインにシナモンと蜂蜜(はちみつ)を入れて患者に飲ませたのがこの種のワインの始まりといわれる。その後17世紀にドイツでワインにニガヨモギの香味を浸出させたものが飲まれるようになり、ベルムートWermut(ニガヨモギのドイツ語)と名づけられた。これがラテン語に変わり、現在のベルモットになった。

[原 昌道]

作り方

使用される草根木皮はニガヨモギを主体とし、苦レモン、シナモン、ウイキョウチョウジなど20種類以上のものがある。これらの薬草をワインにつけ込んで香味づけを行うのであるが、それには、〔1〕ワインに直接草根木皮を浸して浸出させる方法、〔2〕草根木皮を蒸留してエキスのみをとる方法、〔3〕蒸留酒に草根木皮を浸して香味を抽出し、これをワインに加える方法などがある。香味をつけられたワイン(ブランデーや糖類を加えて補強してある)は濾過し、熟成させたのち出荷する。

[原 昌道]

種類と特徴

ベルモットの主要生産地はイタリアフランスで、前者は北イタリア、ピエモンテ地方のトリノを中心につくられ、後者は南フランスのアビニョンからマルセイユに至る地域から産出される。

 酒質は、イタリアン型が濃色甘口であるのに対して、フレンチ型は淡色辛口である。アルコール分は14~20%含まれる。有名なベルモットとしては、イタリアンのチンザノマルティーニ、ガンシア、フレンチのノワイィ・プラがある。そのほかベルモットとややタイプを異にするが、強壮的なワインとして次のようなものがある。〔1〕デュボネ 白ワインにキニーネを主とした各種生薬(しょうやく)を浸してつくった酒。フランスのジョセフ・デュボネが、スペイン国境で飲まれていたものをつくりかえたといわれる。〔2〕ビル ワインに蜂蜜、キナの皮を加えてつくったフランス産の酒。色が濃く、辛くてやや苦味がある。〔3〕キナ・リレ ソーテルンの甘口ワインにキナなどの生薬を加えて香味を浸出し、アルマニャックで強めた酒。〔4〕サン・ラファエル キニーネの入ったフランス産ワイン。赤と白がある。〔5〕アメール・ピコン ワインにオレンジの皮やキニーネを用いるほか、アフリカ、アルジェリア産の薬草を原料としてつくられる。アメール(苦い)という名のとおり苦味の非常に強いビタース(苦味酒)の一種である。フランス人ピコンがこれを創製したのでこの名がある。〔6〕ウインカニス ワインに肉エキスと麦芽汁を加えてつくったイギリス産の酒で、暗紅色の甘い酒である。

[原 昌道]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ベルモット」の意味・わかりやすい解説

ベルモット
vermut[イタリア]

強化ワインの一種。16世紀にライン・ワインにニガヨモギ(ドイツ名でWermut)の花で香りをつけたのに始まるとされる。ワインを基酒とし,これにニガヨモギのほかシナモン,コリアンダー,ウイキョウその他多くの香草を配し,スピリッツを加えてアルコール分17~20%に強化する。このためリキュールに分類されることもある。辛口(白),甘口(赤)があり,前者はワインの風味に力点をおき,後者にはより多く香草類の風味が生かされている。フランス,イタリアが主産国で,辛口はフランス,甘口はイタリアの伝統とされる。食前酒またはカクテルベースとして多く用いられる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ベルモット」の意味・わかりやすい解説

ベルモット

リキュールの一種。おもに白ブドウ酒にニガヨモギ(ドイツ名Wermut)など50種内外の草根木皮の成分を浸出させて作る。スピリッツを加えアルコール分17〜20%にする(強化ワイン)。爽快(そうかい)な苦味があり,アペリチフとして飲用。色濃く,甘味の強いイタリア型と,色薄く,辛口で軽いフランス型とがあり,チンザーノ,マルティニ,デュボネ,ノイリープラット等が代表的銘柄。
→関連項目カクテル果実酒

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

飲み物がわかる辞典 「ベルモット」の解説

ベルモット【vermouth(フランス)】


主にフランス、イタリアでつくられる、白ワインににがよもぎなどの薬草類で風味づけしたフレーバードワイン。かつてはフランス産は辛口、イタリア産は甘口が特徴であったが、現在では両国とも甘口・辛口の両方のタイプをつくっている。食前酒やカクテルの材料に用いる。アルコール度数は14~20度。◇にがよもぎの意のドイツ語「ベルムート(wermut)」に由来する。

出典 講談社飲み物がわかる辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベルモット」の意味・わかりやすい解説

ベルモット
vermouth

リキュールの一種。原料のワインにブランデーや糖分を加え,それに苦よもぎ,りんどう,しょうぶ根などの香料や薬草によって香味をつけた混成ワイン。食前酒に用いられる。辛口のフレンチタイプと,甘口のイタリアンタイプとがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「ベルモット」の解説

ベルモット

 リキュールの一種.数十種の香味をブランデーやアルコールに浸し,その抽出液と白ワインを混ぜて作る.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のベルモットの言及

【中国酒】より

…竹葉青酒(ちくようせいしゆ)と呼ぶのは,白酒にタケの葉のほかに十数種の生薬(しようやく)を浸漬(しんし),その成分を浸出させたのち,糖液を加えたもので,汾酒を基酒に用いた山西省杏花村の竹葉青は全国名酒である。白酒以外にブドウ酒を基酒としたものも多く,その中では烟台の味美思(ベルモット)は全国名酒である。薬酒は,基酒に生薬を加えて成分を浸出させたもので,古来多くのものがつくられており,世界各地に輸出されているものもある。…

※「ベルモット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android