デジタル大辞泉 「カクテル」の意味・読み・例文・類語
カクテル(cocktail)
1 ウイスキー・ブランデー・ジンなどの洋酒に、果汁・ビターズ・シロップ・香料などを加え、氷を入れて混ぜた飲み物。混合酒。
2 オードブルの一。果物・野菜・エビ・カニなどをカクテルグラスに盛り合わせ、カクテルソースをかけたもの。
3 種類の異なる物がまじり合って
[類語](1)酒・
翻訳|cocktail
酒その他の飲料を2種類以上調合し,さまざまな味や香りを楽しむように作る混合飲料。現在のカクテルはアメリカで創作され普及したもので,名称についてはcocktailつまり雄鶏のしっぽという言葉にこじつけた話がいくつも作られているが,いずれも俗説の域を出ない。カクテルは1920年代にロンドンやパリで流行し,イギリスでは午後のティーの代りにカクテルを飲む習慣ができ,やがて社交の場としてのカクテル・パーティも定着する。日本には明治時代に紹介されたらしいが,一般に知られるのは大正末期にカクテル・バーが東京の下町に登場してからのことである。
カクテルベースと呼ばれる基酒としては,ジン,ウィスキーなどアルコール度の高い蒸留酒が多く,ついで微妙な風味をもつリキュールなどの混成酒が用いられる。その他の副材料としては,果汁,清涼飲料などが調合されることも多く,また酒類をまったく使わないカクテルもある。カクテルの数は数千種もあるといわれ,たえず新しいカクテルが生まれているが,多く飲まれているものは100種類ほどである。
カクテルはショートドリンクとロングドリンクに分けられる。ショートドリンクは,アルコール分の強いものを主として脚のついたグラスで飲むもの。ロングドリンクはトールドリンクともいい,タンブラーなど背の高いグラスに入れた飲み物の意で,分量が多いからアルコールは弱めとなる。トロピカルドリンクや寒い時に飲むホットドリンクもこの中に入る。調合する材料によれば,一般的に口の中に甘みの残らないすっきりしたものが食前向き,ブランデーやリキュールを多く使った香りの豊かなものが食後向きといえる。
いくつかの方法がある。シェーカーに氷と材料を入れ手早く振って冷たく混ぜあわす。ミキシンググラスに氷と材料を入れロングスプーンでかき混ぜる。グラスで直接作る。大きなボウルに材料を入れひしゃくで注ぎわける。また電気ミキサーに氷と材料を入れて作るなどの方法がある。材料としてはジン,ウォッカ,ラム,テキーラ,ブランデー,ウィスキーなどの蒸留酒と,クレーム・ド・カカオ,ペパーミント,クレーム・ド・バイオレット,チェリー・ブランデー,アプリコット・ブランデー,スロージン,ガリアノ,カンパリ,ベルモット,デュボネなどのリキュールや混成酒,シャンパン,シェリー,ポートなどのワイン類が基酒としてあげられる。これらのうちもっとも多く使われるのはジンで,これは無色透明で他の材料の色彩が生き,その風味を出しやすいためである。また同じ理由から,最近ではウォッカが基酒として多用されるようになってきており,ラムもこれらについで多く使われている。
調合材料としてはまずリキュール類があげられる。コワントロー,マラスキーノ,キュラソー,カルア,ペパーミント,クレーム・ド・カカオ,チェリー・ブランデー,グラン・マルニエ,ドランビュイ,クレーム・ド・カシスなどがおもなところで,これらを基酒に調合することにより,新しい個性を作りだすことになる。酒以外の材料としては,各種の清涼飲料,ジュース,シロップ,果実,香料,ビターその他がある。清涼飲料としては炭酸水,ジンジャー・エール,コーラ,トニック・ウォーターなど,ジュースではトマト,パイナップル,グレープフルーツなどの缶入りのものや,レモン,オレンジ,ライム,グレープフルーツなどの果実をスクイザーでしぼったものが用いられる。シロップではグレナデンシロップやシュガーシロップが多用される。また,果実類ではレモン,オレンジ,ライム,パイナップルのほかマラスキーノチェリー,スタッフドオリーブが飾りとして用いられる。マラスキーノチェリーは,リキュールのマラスキーノにチェリーを漬け込んだもの,スタッフドオリーブはオリーブの核を抜いてピメント(赤ピーマン)をつめたものである。香料ではシナモン,ナツメグ,クローブ,ビターではアンゴスチュラビター,オレンジビターが使われる。その他グラニュ糖,パウダーシュガー,塩,ソース類などの調味料,セロリ,キュウリなどの野菜,鶏卵,ミルク,クリームなども用いられる。氷は3cm角ほどのキューブアイスが広く使われるが,種類によってはシェーブドアイス(削り氷)も使われる。氷削り器のない場合は麻のタオルに氷を包んでたたきつぶすとよい。シェーカーやミキシンググラスで使う氷は硬くて透明なキューブアイスがよく,大きすぎると冷えかたが足りなくなるなど,氷の選び方でかなり味が左右される。
カクテルは材料と氷があれば作ることができるが,機能的な用具と,用途にあったグラスがそろっていれば,いっそう楽しいものになる。(1)シェーカー 材料を早く冷たく混ぜあわせるための器具で,トップ(上ぶた),ストレーナー(中ぶた),ボディ(胴)の3部分にわかれる。銀製や銀めっきのものもあるが,ステンレス製のものが手入れも簡単で便利である。作るときは,まず氷を入れ水でいったんゆすぐと,器具が冷え氷の角もとれる。材料はあらかじめそろえておき,ストレーナー,トップの順にふたをして,指先で押さえるようにして手早く振る。卵白などを入れたときには十分混ざるようによく振る必要がある。(2)ミキシンググラス 材料の比重が同じで混ざりやすく,透明なカクテルを作る場合に使用されるグラスで,材料を入れてロングスプーンでかき混ぜる。カクテルをグラスに注ぐときは,中の氷がとび出さないようにストレーナーで押さえて注ぐ。(3)メジャーカップ ジガーカップともいう。材料をはかる金属性のカップで,大が45ml,小が30mlの上下組合せのものが使いやすい。(4)その他の用具 ミキシンググラスなどの中の材料をかき混ぜるのに使うロングスプーン(バースプーンとも),レモン,オレンジなどをしぼってジュースをとるためのスクイザー,氷を割るアイスピック,氷ばさみのアイストング,氷を入れるアイスペール,缶切りとコルクスクリューのついた栓ぬき,ホットドリンクに使うグラスホルダー,麻製のグラスタオルなどを用意しておくと便利である。
主なものをあげると次のようになる。脚つきのものでは,カクテルグラス(容量90ml),シャンパングラス(120ml),リキュールグラス(30ml),5オンス(150ml),10オンス(300ml)のゴブレットなど。5オンスゴブレットはサワーグラスともよばれ,ウィスキーサワーなどに用いられる。ワイングラス(240ml)なども使われる。脚のないものでは,8オンス(240ml)と10オンス(300ml)のタンブラー,コーリングラス(360ml),オールドファッションドグラス(180ml)などがある。家庭でふつうに使われているのは8オンスタンブラーである。6オンスオールドファッションドグラスはあらゆる酒類のオンザロックにも使われるので用途が広い。色つきのものはカクテルの器として好ましくない。
冷製オードブルの一種。カクテルグラスに料理を盛りつけることからこの名がある。生のカキ,ゆでたエビ,カニなどに,トマトケチャップ,レモン汁,ウースターソース,白ブドウ酒,タバスコなどを混ぜ合わせたカクテルソースをかけ,冷やして供する。主材料によってオイスターカクテル,シュリンプカクテルなどと呼ぶ。また,果物を数種類取り合わせて同じようにカクテルグラスに盛り付けて,シロップなどをかけたデザートをフルーツカクテルと称している。
執筆者:辻 静雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般には飲用の直前に種々の酒類、果汁、シロップなどを混ぜて、特徴ある新しい香りと味をつくりだして飲む、一種の混成飲料のことである。ただし、一部にはカクテルの瓶詰、缶詰も市販されている。
[原 昌道]
カクテルは18世紀末から19世紀にかけて、アメリカで始まったもので、カクテルの名の由来についてはいろいろな説がある。古代メキシコのトルテカ人の一貴族が珍しい調合酒をつくって、美しい娘のコキトルXochitolの手で国王に献上したところ、王は非常に喜んでこの酒をコクトルXoctlと命名したという説、またアメリカ、ニュー・オーリンズの薬酒商、アントニー・ペイショーが調合した卵酒のような混成酒を人々がコクテエーといって愛飲したのが始まりという説、またcock tail(おんどりの尾)に由来する説もある。いずれにせよ18世紀の末にアメリカで発達し、20世紀になって世界に普及した。日本では明治初期に鹿鳴館(ろくめいかん)で供されたという。1920年代には東京にカクテルバーが開かれた。
[原 昌道]
カクテルの種類は数千種あるといわれるが、大きく分けて、ショートドリンクスとロングドリンクスに分かれる。
ショートドリンクスはいわゆる本格カクテルであり、そのなかには、ジンをベースにしたマテニー(マティーニ)、ギムレット、ウイスキーをベースにしたマンハッタン、オールドファッション、ブランデーをベースにしたアレキサンダー、サイドカー、ウォツカをベースにしたスクリュードライバー、ラムをベースにしたダイキリなどがある。これらはいずれもカクテルグラスを用い、量は60ミリリットル程度で、二口(くち)か三口で短時間に飲み干すのが正しいとされている。そのほか変わったものとしてプースカフェとフラッペがある。前者は、リキュールや蒸留酒、シロップなどいろいろな色彩のものを、比重の重いものから順に混ざらないようについだもので、かつて五色酒といわれて流行したプースカフェナンバーワンやエンゼルキッスなどがある。後者のフラッペは、細かく砕いた氷をグラスに山盛りに詰め、リキュールなどを注ぎ、カットストローで飲む。ベネディクティンフラッペなどが知られている。
ロングドリンクスは比較的時間をかけて飲むもので、量も多くつくられる。フィズ(泡)は蒸留酒に炭酸水と氷を加えた飲み物で、ジンフィズが有名。ハイボールは蒸留酒を炭酸水で割った飲み物をいい、ウイスキーを用いたものがよく飲まれる。サワーは蒸留酒などに酸味を加えた飲み物で、ウイスキーサワーなどがある。クーラーは酒精含有と無酒精のものがあり、前者は蒸留酒にレモンジュース、ライムジュースなどの甘酸味を加え、ジンジャーエール、ソーダなどで割った清涼感のある飲み物で、ボストンクーラーなどが知られている。ジュレップは凍る寸前に飲むミントの香りをもった飲み物で、タンブラーに砕氷を詰め、別のグラスに酒をつぎ、ミントの若葉と砂糖を加えて軽くつぶし、ミントを除いてから前のタンブラーについで、表面が氷結するまでスプーンで混ぜる。かならずミントの小枝または葉を飾りにつける。ラムジュレップなどがある。コブラーは暑いときの疲労回復によいとされる飲み物で、砕いた氷とフルーツシロップとベースとなる酒の混合酒である。クラレットコブラーなどがある。デージー(ヒナギク)は蒸留酒にレモンジュース、ライムジュース、シロップ、砂糖などの甘酸味を加えた飲み物である。スリングは蒸留酒にチェリーブランデーなどの甘酸味をつけ、水で割ったもので、シンガポールスリングなどがある。そのほかアメリカの代表的な飲み物にエッグノッグがある。これは卵と牛乳と酒からなる滋養に富んだもので、クリスマスなどによく飲まれる。パンチはパーティー用飲み物としてつくられ、クラレットパンチなどが有名である。
[原 昌道]
各カクテルにはそれぞれ処方が決められており、それに従ってつくる。材料を混ぜ合わせる方法には、シェーカーを使う方法とミキシンググラスで混ぜる方法(ステア)がある。前者はジュース、砂糖、ミルク、卵など混ざりにくい材料を使う場合に用いる。後者は酒と酒、酒とシロップなど比較的混ざりやすいものを使うときに用いる。いずれも決まった分量の酒などを入れ、その後氷を加え、手早くシェークするか、ステアすることが必要である。
[原 昌道]
カクテルは冷たい飲み物であるから、温まらないうちに飲み干す。なおカクテルは飲む時と場所によって種類が異なる。それを分類すると次のようになる。
(1)アペタイザーカクテル 食欲増進の意味で飲まれる軽いカクテル。マンハッタン、マテニーなど。
(2)クラブカクテル オードブルやスープのかわりに供され、色が美しく滋養に富んだカクテル。クローバークラブ、バーミューダローズカクテルなど。
(3)アフターディナーカクテル 食後のカクテルで甘味の強いもの。アレキサンダーなど。
(4)サパーカクテル 晩餐(ばんさん)用の辛口カクテル。アブサンカクテルなど。
(5)ナイトキャップカクテル 就寝前のカクテル。コアントロー、アニスやエッグブランデーを用いたカクテルが多い。
(6)シャンパンカクテル 祝宴に用いられるカクテル。
[原 昌道]
カクテルの製法は、ベース(基酒)を決め、これに味や香り、色を添えていく。果実(果汁)としてはレモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、オリーブ、チェリーなどが使われる。そのほか、甘味用に各種シロップ、味を引き締めるためにビターズ(苦味酒)や各種香辛料、ロングドリンクスでは各種ソーダ類が使われる。また副材料としてミルク、クリーム、卵、砂糖が用いられ、ミネラルウォーターと氷は必需品である。ベースとしてはジン、ウイスキー、ブランデー、ウォツカ、ラム、焼酎(しょうちゅう)などの蒸留酒がおもに使われるが、アブサン、アニゼット、アプリコットブランデー、キュラソーなどのリキュールをベースにしたり、ベルモット、シャンパン、ワイン、清酒をベースにしたカクテルもある。
[原 昌道]
カクテルに使う用具としては、混合用のシェーカーやミキシンググラス、かき混ぜるバースプーン、ミキシンググラスにかけて氷とカクテルを分けるのに使うストレーナー、酒の量を測るジガー(メジャーカップ)、ジュースをつくるスクイザー、氷割り用のアイスピック、氷を入れるアイスバスケット、ビターズを入れるビターズボトルなどがある。カクテルを入れるグラスは、ショートドリンクスのカクテル用にはカクテルグラスが、またハイボールやフィズなどのロングドリンクスには中形タンブラーが、サワーやパンチにはそれぞれサワーグラス、パンチグラスが使われる。
[原 昌道]
『木村与三男編著『新カクテール全書』(1989・ひかりのくに)』▽『日本バーテンダー協会編著『NBAオフィシャル・カクテルブック』(1994・柴田書店)』
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