改訂新版 世界大百科事典 「ベンジジン転位」の意味・わかりやすい解説
ベンジジン転位 (ベンジジンてんい)
benzidine rearrangement
ヒドラゾベンゼン((1))は酸の存在下で4,4′-ジアミノビフェニル(ベンジジン,(2))に転位する。
この転位は1863年ドイツの化学者A.W.vonホフマンにより見いだされた。芳香族ヒドラゾ化合物が行うこのような転位を総称してベンジジン転位と呼ぶ。化合物(3)のような4-置換ヒドラゾベンゼンを同様の反応にかけると,4位が置換基Xでブロックされているためセミジン誘導体(4)を与える。
このような反応はベンジジン転位の一種と考えられるが,セミジン転位semidine rearrangementと呼ばれている。これらの転位反応は,一つの分子内で2個の原子または原子団が互いにその位置を交換する分子内転位であり,反応速度はヒドラゾ化合物に対して一次,酸濃度に対して二次となる。すなわち,ヒドラゾベンゼンの2個の窒素上にプロトン化が同時に起こり,N-N結合が開裂しながら,同時に4位と4′位のC-C結合が形成されるものと考えられている。
執筆者:友田 修司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報