日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンジジン」の意味・わかりやすい解説
ベンジジン
べんじじん
benzidine
芳香族アミンの一つ。4,4'-ジアミノビフェニルともいう。無色またはやや赤色の結晶。酸素と光で暗黒色に変化する。冷水には溶けにくく、熱水には溶ける。熱エタノール(エチルアルコール)にはよく溶ける。80℃以上の熱水から再結晶したものは無水和物、60℃以下からは一水和物を生じる。ニトロベンゼンの還元で得られるヒドラゾベンゼンを無機酸と加熱すると、転位反応(ベンジジン転位)がおこって生成する。染料の原料として使われたが、現在は使用を禁止されている。また種々の金属イオンの検出試薬、リン酸イオン、硫酸イオンの沈殿試薬としても用いられる。発癌(はつがん)性が強く、粉末でも蒸気でも皮膚から吸収されるので、取扱いには十分注意する必要がある。
[務台 潔]