ペシェル(英語表記)Oscar Ferdinand Peschel

改訂新版 世界大百科事典 「ペシェル」の意味・わかりやすい解説

ペシェル
Oscar Ferdinand Peschel
生没年:1826-75

ドイツ地理学者ドレスデンに生まれ,ハイデルベルク,ライプチヒ両大学で法律学を学ぶ,アリストテレス研究で学位を取得,48年アウクスブルクの新聞記者となる。54年以降,雑誌《海外事情》の編集に携わり,地理や民族について多くの記事を執筆するとともに,地理学史に関心を向け,《地理的発見時代》(1858),《地理学史》(1865)の著書に続いて,《比較地理学の新問題》(1869)などを公刊し,前代のC.リッターの地理学を批判し,地表形態の因果的把握を地理学研究の前面に位置づけた。リッター批判にもかかわらず,その形態分析にはリッターの比較研究法の本質が巧みに生かされ,近代地形学の基礎がひらかれた。一方,民族や文化への関心も強く,《民族学》(1874)を刊行死後出版された《地理学・民族学提要》3巻(1877-79)は,人種,言語,経済・社会,宗教などの内容を含み,人類学の側からの評価も高い。リッターとF.ラッツェルの地理学のつなぎの役割を果たしたというべきであろう。70年,ライプチヒ大学に地理学講座を創設し,75年まで教授。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペシェル」の意味・わかりやすい解説

ペシェル
ぺしぇる
Oskar F. Peschel
(1826―1875)

ドイツの地理学者。自然地理学、とくに近代地形学の基礎をつくった。リッターの目的論的考え方を批判し、大縮尺の地形図から類似の地形を抽出し、それぞれの地表形態について発生論的にその変化の様式を類推して、地形の特色・起源を明らかにし、地形学を近代科学一員とさせた基礎をつくった。1871~1875年にライプツィヒ大学教授となる。すでに1854年には、地誌学・民族学雑誌の編集を担当していた。主著に、没後の1877~1881年に刊行された『地球科学の歴史』『地表形態研究としての比較地学の新しい問題』があり、さらに1879~1880年には「物理地学」の論文集が刊行されている。

[市川正巳]

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