リッター(読み)りったー(英語表記)Karl Ritter

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リッター」の意味・わかりやすい解説

リッター(Johann Wilhelm Ritter)
りったー
Johann Wilhelm Ritter
(1776―1810)

ドイツの電気学者。ハイナウ(現、ポーランドのホイヌフ)近くの牧師の子。1796年から2年余イエナ大学で医学を学ぶ。ゴータ公に出仕(1801)、母校の講師(1803~1804)を経て1805年からミュンヘンの科学アカデミー会員。在学中にガルバニズムの研究を始め、異種金属セルによる水の電気分解、これによる摩擦電気とガルバニズム電気の同一性の証明(1799~1800)、金属の電気化学列の発見とこれに基づくセル電流発生の化学機構説の提唱(1798)、乾電池発明(1802)、蓄電池の製作(1803)、オームの法則の先駆的発見(1805)、動植物の電気生理学など多大の開拓的業績をあげた。また、自然界の「極性」という概念に基づき、赤外線の存在が知られるとすぐに紫外線を発見する(1801)。しかし、自然哲学的思弁に勝り、学界に認められず、33歳にして不遇のまま早世する。

[肱岡義人]


リッター(Karl Ritter)
りったー
Karl Ritter
(1779―1859)

ドイツの地理学者。ハレ、ゲッティンゲン大学卒業後、教育関係の仕事に従事していたが、1820年よりベルリン大学教授となり、フンボルトとともに近代地理学の樹立に貢献した。しかし、フンボルトが自然地理学の創始者と目されるのに対して、リッター人文地理学祖述者である。1817年『地理学』Die Erdkundeを著したが、副題に「自然と人類の歴史との関連、すなわち一般比較地理学」と記されているように、リッターは地理学をもって自然と人類社会の因果関係を考察すべきことを主張。18世紀の観念論の影響を受け、地表を人類の居住の場所であるのみならず、神による人類の教育の場所とみなすなど、なお所論に神学的目的論の色彩が認められる。また比較地理学を主張するように、世界の各地域の地域的個性を比較究明するために、『地理学』の続編として22年から38年を費やして、19巻にわたる膨大な世界の地誌的記述を行ったが、アジア、アフリカ以外の地域は未完に終わった。

織田武雄


リッター(Gerhard Ritter)
りったー
Gerhard Ritter
(1888―1967)

ドイツの歴史家。フライブルク大学教授(1925~56)。第三帝国末期に抵抗運動に連座して収容所に入った良識ある保守派。その学風は、ドイツ歴史学の伝統に忠実な政治史で、歴史上の偉大な人物への共感に満ち、戦後はナチスによって汚されたドイツのよき伝統を守ろうとした。主著『ルター』(1925)、『シュタイン』二巻(1931)、『フリードリヒ大王』(1936)、『政治と軍事』四巻(1954~68)。

[木谷 勤]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リッター」の意味・わかりやすい解説

リッター
Ritter, Gerhard

[生]1886.4.6. カッセル,バートゾーデン
[没]1967.7.1. フライブルク
ドイツの歴史家。 H.オンケンの教えを受け,1924年ハンブルク大学,25年以降フライブルク大学教授。 44~45年ヒトラーへの抵抗運動に参加して拘禁された。第2次世界大戦後フライブルク大学教授に復帰,ドイツ歴史協議会議長をつとめた。穏健自由主義の立場をとり,特に 19世紀以降のドイツ史,ドイツ軍部の研究で著名。主著『シュタイン伝』 Stein (2巻,1931) ,『フリードリヒ大王』 Friedrich der Grosse (36) ,『権力思想史』 Die Dämonie der Macht (48) ,『政治と軍事』 Staatskunst und Kriegshandwerk (3巻,54~65) 。

リッター
Ritter, Carl

[生]1779.8.7. クウェドリンブルク
[没]1859.9.28. ベルリン
ドイツの地理学者。 1820年以降ベルリン大学教授として,ヨーロッパ諸国の多くの地理学者を育成した。歴史過程や自然史と地理学との関連を主張し,フンボルトとともに現代地理学の創始者とされている。その理論的根底は,J.ペスタロッチの教育原理と J.ヘルダーの人類と環境とに関する理論であるが,世界の正確な知識は自然現象の鋭い観察によって得られるとした。主著に『自然と人類史とのかかわりにおける地理学』 Die Erdkunde im Verhältnis zur Natur und zur Geschichte des Menschen (2巻,1817~18,2版 22~59) がある。

リッター
Ritter, Johann Wilhelm

[生]1776.12.16. シュレジエン,サミッツ
[没]1810.1.23. ミュンヘン
ドイツの物理学者。イェナ大学で医学を学び,のちそこで教えた。おもに電気,電気化学の研究に従事。金属の電気化学列に相当する概念を提唱 (1798) ,水の電気分解の研究 (1800) ,電気メッキ法の発見,熱電流の先駆的研究 (01) ,乾電池の発明 (02) ,蓄電池の原理 (03) などが知られる。また紫外線の化学作用に関する先駆的業績を残した (01) 。

リッター
Ritter, Constantin

[生]1859
[没]1936
ドイツの哲学者,古典文献学者。テュービンゲン大学教授。プラトン研究で知られ,プラトンの著作の成立年代をその言語使用の面から考察した。主著"Platos Dialoge" (2巻,1903,09) ,"Die Kerngedanken der platonischen Philosophie" (30) ,"Platonismus und Christentum" (34) 。

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