改訂新版 世界大百科事典 「ペットクリニック」の意味・わかりやすい解説
ペットクリニック
主として家庭で愛玩用に飼われている動物の診療を行う動物病院。各種の動物を愛玩の目的で飼育する際,その動物が病気にかかると,獣医師の診断,治療を受けることになる。家庭生活の中で愛情を傾けられ,伴侶としての役割をもっているような動物はペットと呼ばれ,飼主からは家族の一員として認識されている。
これらの動物について,内科的,外科的な診断を下し,それぞれの処置,加療を行うことを認められているのは,獣医師だけである。獣医師免許ではとくにウシ,ウマ,ブタなどの大きな家畜の免許とイヌ,ネコ,鳥などの小さな家畜の免許を区別していない。しかし,愛玩用動物の幅も近年非常に広くなり,ワニやサルといった動物が含められる場合もある。
ペットクリニック,犬猫病院,動物病院,獣医科病院,獣医科診療所などと種々の呼称で看板が出されているが,これらについては,とくに細かく規制されているわけではない。診療施設を開設するにあたり,当該施設の所在地を管轄する都道府県知事に,省令で定める事項を届け出なければならないことが獣医師法(1949公布)によって規定されている。診療を業務とする獣医師は,上の規定を守り,診療,検案にたずさわり,公共に奉仕している。
ペットの病気のうち狂犬病の発生予防に対しては,とくにそのまんえんを防止し,撲滅するために狂犬病予防法(1950公布)が制定されている。この法律によって,イヌの所有者は毎年1回市町村(区)長にイヌの登録をしなくてはならない。また狂犬病の予防注射を6ヵ月ごとに受けなくてはならないと義務づけられている。このほか,人と家畜間で感染が成立するような病気に対する予防対策についても,獣医師がペットクリニックを介して努力している。
執筆者:本好 茂一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報