改訂新版 世界大百科事典 「ホングウシダ」の意味・わかりやすい解説
ホングウシダ
Lindsaea odorata Roxb.
山中の湿った岩上に群生するシダ植物ホングウシダ科の常緑性の小草本。根茎は短く横走し,光沢のある暗褐色で細い剛毛状の鱗片をつける。葉柄基部は赤褐色となり,根茎と同じ鱗片をつける。上部は薄茶色。葉面は1回羽状に分岐し,線状披針形,大きいものでは30cmに達する。羽片は三角状長楕円形,円頭から鈍頭,下側はほぼ一直線で,上側は直線からわずかに凸形となり,切れ込みがある。2~3本の脈端を連ねた連結脈に胞子囊がつき,包膜におおわれる。本州最南部から九州の一部にまれに産し,屋久島から琉球,台湾,中国南部,それにアジアの熱帯に広く分布し,マダガスカルに達している。サイゴクホングウシダL.japonica (Baker) Dielsは渓流沿いの湿った岩上につく小シダで,ホングウシダの変種とする考えもある。ホングウシダは乾燥標本にすると,クメリンが生成されて特殊なにおいがあり,学名のodorataはそれからきている。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報