日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポメラニア」の意味・わかりやすい解説
ポメラニア
ぽめらにあ
Pomerania
ヨーロッパ北東部、オーデル川がバルト海に注ぐ河口を挟んでドイツとポーランドの沿海部を東西に延びる地域の歴史的名称。ドイツ語名ポンメルンPommern、ポーランド語名ポモジェPomorze。現在は、オーデル川以東および西の一部がポーランドに属し、西部の残りがドイツに属してメクレンブルク・フォアポンメルン州を構成している。「フォア(前部)ポンメルン」も西部地域の歴史的名称。東部はドイツ語で「ヒンター(後部)ポンメルン」である。
もとスラブ人の居住地だが、12世紀に西スラブ人の貴族グライフェン家が勢力を得て神聖ローマ帝国の諸侯に列し、キリスト教の布教とドイツ人の植民が行われ、グライフスワルト、シュテッティン(ポーランド語名シュチェチン)などのドイツ都市も建設された。他方農村では16世紀以降グーツヘルシャフト(農場領主制)が発展している。グライフェン家は1637年に断絶、ウェストファリア条約で東部ポメラニアはブランデンブルク・プロイセンに、西部ポメラニアはスウェーデンに与えられたが、後者も1815年までにすべてプロイセンに帰し、両者あわせてプロイセン王国の一州をなした。第二次世界大戦後、東部ポメラニア(シュテッティンと西の一部を含む)はポーランド領となり、西のフォアポンメルンは旧東ドイツ(ドイツ民主共和国)のメクレンブルク州に編入されたが、1990年のドイツ再統一にあたりメクレンブルク・フォアポンメルン州に再編された。
[坂井榮八郎]