東ヨーロッパの国際河川。下流部176キロメートルはドイツとポーランドの国境をなす。オーデルはドイツ名で、チェコとポーランドではオドラ川Odraという。全長約900キロメートル、流域面積約12万5000平方キロメートル。ポーランドではビスワ川に次ぐ第二の大河。チェコ北東部のスデティ(ズデーテン)山脈に発し、北東流して、ポーランドのシロンスク(シュレージエン)平原に出、ついで北西に流れてブロツワフ(ブレスラウ)を過ぎ、台地間の低地を曲流しつつ下る。グービン(ウィルヘルム・ピーク・シュタット)北方でドイツ国境に至ってナイセ川(ポーランド名ニーサ川Nysa)をあわせ、国境を流れて下流のシュチェチンに至る。シュチェチン湖(グロス潟Grosses Haff)に出たのち、ウスドムUsedom、ボリンWollinの2島によってピイーンPeene、スウィンSwine、ディベノウDievenowの3川に分かれてバルト海に注ぐ。
一般にオーデル川は浅いが、河口から約500キロメートルのブロツワフでも標高100メートルと低平であるため、40~50トン級の船の航行はいうまでもなく、オーデル川本流の大部分は500トン以上の船を通し、物資輸送の重要幹線となっている。とくに下流部は運河網が発達し、ビスワ川、ハーフェル川、シュプレー川、エルベ(ラベ)川などと結ばれ、国際的にも重要な役割を演じている。ただ上流部は丘陵地を流れるので流速も速く、流量も変化に富んでおり、その一部分を航行できるように改修するため巨費が投じられている。
[三井嘉都夫]
カール大帝のザクセン征服以後、10、11世紀を通じて、エルベ川と支流ザーレ川がゲルマン人とスラブ人の居住地の境界をなした。エルベ川とオーデル川に挟まれた地域にはスラブ系のウェンド人が居住していた。ザクセン朝、初期ザリエル朝の諸帝は、ウェンド人のキリスト教化と、その地域へのドイツの支配権の拡大に努めたが、ウェンド人はこれに抵抗してしばしば反乱を起こし、とくに1066年の大反乱により、エルベ以東のドイツの支配は崩壊した。1147年ハインリヒ獅子(しし)公のもとに行われた対ウェンド人十字軍が先住民の征服に成功した結果、エルベ川を越えてドイツ人の植民活動が本格的に開始され、13世紀の初頭には、植民はほぼオーデル川の線まで進み、先住民ウェンド人は急速にドイツ人に同化した。一方、オーデル川以東にポーランド人の国家が形成されたため、以後、シュレージエン地方の突出部を除けば、だいたいオーデル川がドイツ人とスラブ人の居住地の境界線となった。植民活動はその後もドイツ騎士団の手によって続けられ、バルト海沿岸地方に、ドイツ人の都市とドイツ人の植民村落とが建設されていった。これが後の東プロイセンである。シュレージエンの領有をめぐって、プロイセンのフリードリヒ2世(大王)とオーストリアのマリア・テレサ(テレジア)との間に七年戦争が起こり、シュレージエンはプロイセン領となった。第二次世界大戦後、ポツダム協定により、オーデル川とその支流ナイセ川のいわゆる「オーデル‐ナイセ・ライン」がドイツとポーランドとの国境とされ、東ポンメルン(ポメラニア)やシュレージエンなどオーデル以東のドイツ領はポーランドに編入された。
[平城照介]
ヨーロッパ中央部を北流する川。ポーランド語名はオドラOdra川。全長903km。流域はポーランド西部とドイツ東部をおおう。チェコ北部のズデーテン山地に源を発し,カルパチ山脈の峠を越えてポーランド領内にはいる。いくつかの支流を合わせつつシロンスク(シュレジエン)平原を北西に流れ,ブロツワフ(旧ブレスラウ)を貫流,モレーンの台地間を曲流しながら下る。ウィルヘルム・ピーク地方でナイセ川を,さらに右岸にワルタWarta川を合わせ,北流してオーデル湾に注ぐ。第2次大戦後,ナイセ川とこのオーデル川を連ねるオーデル・ナイセ・ラインがポーランドとドイツの新しい国境と定められた。これは長く東西対立の一因となったが,1950年に東ドイツはこの線を最終的国境と認め,70年には西ドイツもこれを認めた。オーデル川は水上物資輸送の大動脈で,シュレジエンの炭田や工業地帯とバルト海を,さらにはチェコとバルト海を結んでおり,下流部には運河網が発達している。
執筆者:武田 むつみ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
モラヴィア山地に発し,ポーランド領内を北西に下ってナイセ川と合流し,北に向かってバルト海に注ぐ中部ヨーロッパの大河。全長861km。ナイセ川とともに,ドイツとポーランドの国境,オーデル‐ナイセ線を形成している。今日では上流まで河運に利用され,重要な交通路となっている。運河によってエルベ川に接続されている。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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