改訂新版 世界大百科事典 「ポリュグノトス」の意味・わかりやすい解説
ポリュグノトス
Polygnōtos
古代ギリシアの画家。生没年不詳。タソス島に生まれ,前470年から前440年ころにかけてアテナイで活躍。アテナイのストア,ヘファイステイオン,デルフォイのクニドス人のレスケ(集会場)などにすぐれた壁画を描き,ギリシア絵画の最初の巨匠とされた。その遺作はないが,古代の文献が伝えるところでは,彼の描いたアテナイのストア・ポイキレの《イリウ・ペルシス(トロイア落城)》の絵は深い人間性を表現した当代の傑作とされ,その高い精神性の表明はオリュンピアのゼウス神殿やパルテノンの彫刻に影響を与えた。彼は顔を四分の三正面に表現し,自然を画面に採り入れ,物陰に人物を配することによって遠近法の手法を試みたともいわれている。
執筆者:前田 正明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報