公衆のための公益的な大集会行事に適した会堂のこと。これにあたる英語はパブリック・ホールpublic hallで、福沢諭吉らの唱道した「演説会」――のちに講演会・雄弁会等も加わる――を晴雨にかかわらず開催できて、しかも営利性と無関係な会場を要望する声が強い世論となって造営されることになった。いわば大正デモクラシーの象徴ともいえる建造物である。地方自治体による公営のもののほかに、地区住民自治組織で設ける民営のものも相当数あった。市立として早くできたものに、京都市岡崎公会堂(1916)、大阪市中之島公会堂(1919)、東京市墨田公会堂(1926)、同日比谷(ひびや)公会堂(1929)などがあり、たとえば岡崎公会堂では1921年(大正10)アインシュタイン博士の講演会が行われた。また大都市では音楽愛好家たちの間でも設置要望が強まり、事実、世界的名演奏家・名独唱家や日本の交響楽団等の公演が可能になったのも、公会堂設置以後であるとさえいえる。都市の公会堂はシティ・ホールcity hallとかタウン・ホールtown hallとかよばれ、第二次世界大戦後も仙台市が設置(1951)したが、小公会堂の多くは公民館ないしその類似の施設に変身したし、公会堂新設よりも、むしろ専用のコンサート・ホールconcert hallが特設されるとか、展示室・図書室・映写設備・ホアイエfoyer(気楽な溜(たま)り場フランス)等を備え、軽食堂も付属する大集会場が市民会館、文化会館、コミュニティ・センターcommunity center等の名で設置されるとかの例が多くみられる。
[藤原英夫]
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