ポリワーノフ(読み)ぽりわーのふ(英語表記)Евгений Дмитриевич Поливанов/Evgeniy Dmitrievich Polivanov

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポリワーノフ」の意味・わかりやすい解説

ポリワーノフ
ぽりわーのふ
Евгений Дмитриевич Поливанов/Evgeniy Dmitrievich Polivanov
(1891―1938)

ロシアの言語学者。スモレンスクに生まれる。1912年ペテルブルグ大学文学部卒業。日本語を黒野義文(くろのよしぶみ)(?―1917/1918)に、言語学をボードアン・ド・クルトネーに学ぶ。1914年(大正3)と1915年に来日。長崎(三重村)・東京・京都・土佐その他の方言、とくにアクセントを研究し、日本アクセント学に貢献した。ドゥンガン語、中国語、ウズベク語(トルコ系)の研究の論著があり、『東洋学大学用言語学入門』(1928、レニングラード)は高い水準の研究として有名。プレトネルOrest Pretner(1892―1970)との共著『日本口語文法』(1930、モスクワ)もある。原始トルコ語長母音説の創唱者でもあり、スターリンによる粛清工作で1937年に逮捕され、翌1938年ウズベキスタン共和国のタシケントに獄死した。1963年には名誉を回復した。

村山七郎 2018年8月21日]

『ポリワーノフ著、村山七郎編訳『日本語研究』(1976・弘文堂)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポリワーノフ」の意味・わかりやすい解説

ポリワーノフ
Polivanov, Evgenii Dmitrievich

[生]1891.3.12. スモレンスク
[没]1938.1.25. モスクワ
ソ連の言語学者,音声学者。 1912年ペテルブルグ大学卒業。 19年共産党員となると同時にペテルブルグ大学教授。日本語,朝鮮語チュルク諸語,中国語など多くの東洋語を正確に観察・記録し研究した。 14,15年と2度にわたり来日し日本語のアクセントを研究。多くの論文を残している。 28~29年 N.マールの御用学説を批判したために中央アジアに移住を余儀なくされ,その後も同地で教授,研究の活動を続けたが,37年に投獄され,翌年獄死した。 63年になってその名誉が回復された。主著『東洋学大学用言語学入門』 Vvedenie v yazykoznanie dlya vostokovednykh vuzov (1928) ,『一般言語学論文集』 Stat'i po obshchemu yazykoznaniyu (68) 。日本語関係の論文を集めたものとして『日本語研究』 (村山七郎編訳,76) がある。

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