改訂新版 世界大百科事典 「マツカサウオ」の意味・わかりやすい解説
マツカサウオ (松毬魚)
pinecone fish
Monocentris japonicus
エビスウオ(三重),グソク(和歌山,高知),イシガキウオ(熊本)などの地方名がある。キンメダイ目マツカサウオ科の海産魚。本州中部以南,フィリピン,インド洋を経て南アフリカにわたり広く分布する。体は全体として丸みを帯び,厚い大きなうろこでできた堅固な甲に包まれ,うろこには隆起がある。背びれの5~6本の強い棘(きよく)は1本おきに左右互い違いに倒すことができる。腹びれにも太くて先端のとがった棘があり,その基部をこすりあわせて音を出す。うきぶくろでも発音する。体の地色は黄色で,うろこの周囲は黒く縁どられ,えらぶたの縁や下あごも黒い。下あごの先端に近い腹面に卵円形を呈する1対の発光器があり,何本かの細い管で体外に開いているが,発光器内に共生する発光バクテリアにより発光する。全長15cm内外。岩礁に富む海底にすみ,夜間表層に浮上する。遊泳はゆるやかで,エビ類を好んで食べる。肉は美味で,練製品の原料としても用いられる。水族館で観覧に供されることが多い。
執筆者:日比谷 京
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報