日本大百科全書(ニッポニカ) 「マツカサウオ」の意味・わかりやすい解説
マツカサウオ
まつかさうお / 松毬魚
knight fish
[学] Monocentris japonica
硬骨魚綱キンメダイ目マツカサウオ科に属する海水魚。北海道積丹(しゃこたん)半島以南の日本海側および青森県以南の太平洋側、朝鮮半島の南岸、東シナ海、フィリピンを経てアフリカに至るインド・西太平洋に広く分布する。体は側扁(そくへん)し、体高は高い。頭部はよく発達した骨板と皮膜で、体側面は肥厚した松かさ状の鱗(うろこ)で覆われる。和名はこの鱗の形状に由来する。第1背びれは左右に交互に傾斜する6本の強い棘(とげ)からなり、その基部にロック機構がある。この機構は棘を倒せなくするもので、外敵からの防御に役だつ。ロックされた棘を倒すには、この機構を解除する必要がある。腹びれはロック機構のある強大な1棘(きょく)と3本の軟条からなり、棘とその基底部とを摩擦して発音する。下顎(かがく)の先端に1対の黒い発光器があり、発光バクテリアを共生させてその光を利用する。海水中のバクテリアが進入できるように、発光腺(せん)からはいくつかの細管が体外に通じている。体色は淡黄灰色で、各鱗の縁辺は黒い。体長約15センチメートル。沿岸の浅海~水深100メートルの岩礁域にすむ。昼間はやや深い所または暗所に潜み、夜間行動する。水族館で鑑賞用に飼育されている以外、食用としての利用価値は少ない。世界で2属4種が知られている。
[岡村 收・尼岡邦夫 2016年6月20日]