生物発光(読み)せいぶつはっこう(英語表記)bioluminescence

翻訳|bioluminescence

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

生物発光
せいぶつはっこう
bioluminescence

生物のエネルギー利用の一形態としての,発光現象。酵素反応による化学発光であり,効率がよくて,として散逸する部分が少いので,冷光である。昆虫類のホタル,プランクトンのヤコウチュウは最も著しい発光動物である。そのほかヒカリウミエラ,ウミサボテン,ヒカリウミウシホタルイカウミホタル,ヒカリムカデ,ギボシムシヒカリボヤハダカイワシマツカサウオ,チョウチンアンコウなど動物界に広く発光現象をなすものが知られている。また菌類のうちに発光するものが 50種以上知られている。なかでもツキヨタケの子実体,ナラタケの菌子束などは日本でもよく知られている。海の細菌類にも発光現象をなすものがあり,貯蔵中の食用魚や水産加工食品が冷暗な場所で発光することがあり,その原因となる発光細菌を容易に分離することができる。発光物質をルシフェリン,酵素をルシフェラーゼと総称するが,種によって異なる物質である。

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百科事典マイペディアの解説

生物発光【せいぶつはっこう】

生物体による発光現象。酸化発光の一種で,ルシフェリンと総称される発光物質が発光酵素であるルシフェラーゼの触媒作用によって酸素またはATPと結合する際に光子を放出して,光を生じる。色は黄,緑,青が多く,ほとんど完全なルミネセンスである。ヤコウチュウ,ホタルイカ,ウミホタル,ホタル,マツカサウオなどおもに動物に多く,細菌類,さらにツキヨタケ,ナラタケなどの植物にみられる。自分で発光するもののほかに発光細菌の寄生によるものも少なくない。
→関連項目ホタル(蛍)ルミネセンス

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世界大百科事典 第2版の解説

せいぶつはっこう【生物発光 bioluminescence】

生物が自らまたは共生生物の働きによって発光すること。生物発光はほとんど熱を伴わないきわめて効率の高い光(効率97%)を生物が発することであり,現在の人工照明,人工的化学発光の効率をはるかに越える有機化合物の酸化反応によるエネルギー放射とみなされる。この発光はある光線が照射されている間だけ光るリン光や蛍光と区別され,熱に安定なルシフェリンluciferinと不安定なルシフェラーゼluciferaseと呼ばれる物質の反応(L‐L反応と呼ばれる)により生じる。

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精選版 日本国語大辞典の解説

せいぶつ‐はっこう ‥ハックヮウ【生物発光】

〘名〙 生物体が光を発する現象。体内の化学エネルギーが光に変換されるもので、熱は伴わない。植物では細菌・菌類などに限られるが、動物では広くみられる。

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化学辞典 第2版の解説

生物発光
セイブツハッコウ
bioluminescence

生物ルミネセンスともいう.生物が発光する現象.発光生物には,発光細菌の寄生や発光小動物との共生によるものと,自身の発光によるものとがある.魚類ではキンメモドキ,昆虫類ではホタル,ウミホタル,植物では発光細菌などの分裂植物,鞭毛植物,ツキヨダケなどの担子菌植物などが有名である.生物発光は生体におけるきわめて効率のよいエネルギー変換の一形式であり,本質的には化学ルミネセンスである.ホタルやウミホタルについては数多くの研究が行われ,発光機構も一応解明されたが,そのほかの発光生物については不明な点が多い.発光物質ルシフェリン1分子が酸化酵素ルシフェラーゼアデノシン5′-三リン酸(ATP)の存在下で,酸素1分子によって酸化される際に,1光子を生成して発光することは,すべての生物発光に共通していると考えられる.ルシフェラーゼが単離された発光生物はまだ少ない.ホタルの発光機構を利用したATP,あるいは酸素の微量定量装置が開発された.試料に一定量のホタルルシフェリンとルシフェラーゼを共存させ,蛍光測定によりATPを定量するもので,その応用が期待される.オワンクラゲから単離された緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein,GFP)は,近紫外および可視光で励起され,緑色の蛍光を発する.発色団の化学構造(p-hydroxybenzylideneimidazolinone)は,分子内の三つのアミノ酸残基(Ser-Tyr-Gly)が反応してできる単純なもので,外界の物質の助けなしに光るという特徴を有する.GFPを使うと通常のタンパク質を蛍光標識することができる.すなわち,遺伝子工学的に,目的とするタンパク質とGFPの融合タンパク質をつくればよいことになる.タンパク質のGFP標識法は,特定のタンパク質の細胞内局在を蛍光顕微鏡で調べるのに有用で,細胞生物学分野で重宝されている.

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