日本大百科全書(ニッポニカ) 「まぶしさ」の意味・わかりやすい解説
まぶしさ
まぶしさ / 眩しさ
glare
一般には強い光に目がくらむことをいうが、光学的には時間的空間的に不適切な輝度分布、輝度範囲、または極端な対比などによって、視覚の不快感、あるいは物を知覚する能力の低下が存在する視覚の条件と定義づけられている。不快感を生じるまぶしさのことを不快グレア、物の見え方を低下するまぶしさのことを減能グレアという。また、減能グレアのひどい状態で、かなりの間、物がまったく見えなくなるまぶしさを眩惑(げんわく)グレアということもある。
照明における不快グレアは、光源の輝度が高いほど、光源の見かけの大きさが大きいほど、光源と視線のなす角度が小さいほど、背景輝度が小さいほど、などで強くなり、ひいては疲労の原因になる場合がある。そのため、まぶしさを軽減することは、照明設計の重要課題であり、輝度の高いランプを拡散性のカバーやグローブ(光を散乱するために光源を覆う装置)で覆ったり、ルーバー(ルーバともいう。グレアを防止するための格子状の遮光板)や反射板で保護角を深くして直接目に見えないようにする。
照明設計の段階で不快グレアの程度を事前評価することがある。照明分野によって評価方式は異なるが、基本的な考え方の基礎は同じであり、国際的には室内照明、屋外スポーツ照明および道路照明の三つの分野でそれぞれ定められ、不快グレアの制限値が規定されている。また大面積の窓もまぶしさの原因になることもあるので、ブラインドやカーテンが用いられる。
減能グレアは、目の角膜における照度が高いほど、また、まぶしい光源が視線に近いほど大きくなる。グレア光が眼球の中に多量に入ると、網膜で反射し眼球内に散乱する光の量も増える。そうするとあたかも目の中に光のベールが生じたようになり、見ようとするものが見えにくくなり、さらに増加するとついには見えなくなってしまう。自動車運転中に遭遇する対向車のヘッドライトによるまぶしさがこれにあたる。一般に視線を中心としたプラスマイナス30度の範囲をグレアゾーンといい、この範囲に高輝度光源がないようにすることがたいせつである。
[高橋貞雄]
『照明学会編『照明ハンドブック』(1978・オーム社)』