ままの川(読み)ままのかわ

改訂新版 世界大百科事典 「ままの川」の意味・わかりやすい解説

ままの川 (ままのかわ)

地歌・箏曲曲名三味線菊岡検校(1792-1847),箏は松野検校(1834年登官)作曲による京風手事物作詞宮腰夢蝶で,夢蝶の名をよみ込んで,成行きまかせの遊女の恋を歌っている。手事物にしては手事部分が短く,歌の旋律に凝った端歌物的な曲。冒頭の〈夢が浮世か 浮世が夢か 夢てふ里に住みながら〉は義太夫節壺坂霊験記》の〈沢市内の段〉の初めに用いられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ままの川」の意味・わかりやすい解説

ままの川
ままのかわ

地歌・箏曲の曲名。京風手事物。菊岡検校と松野検校の合作。三弦を菊岡検校,箏を松野検校が作曲したと思われる。作詞は宮腰夢蝶。詞章は,夢とも浮世ともつかない遊女のせつない恋心を川の縁語で綴りながら,ままになれという意味を込めて「ままの川」と歌いおさめる。詞章の「夢てふ廓」に作詞者の名前が詠み込まれている。構成は,前弾き-前歌-手事 (手事・チラシ) -後歌。マクラが明瞭ではなく,チラシも短い。手事物ではあるが幽艶な歌に味わいがある。三弦は二上り。箏は平調子。なお,義太夫節『壺坂霊験記』の「沢市内の段」の最初で沢市が歌うのは,この曲の冒頭である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ままの川」の意味・わかりやすい解説

ままの川
ままのかわ

地歌箏曲(そうきょく)の曲名。宮腰夢蝶(むちょう)作詞、菊岡検校(きくおかけんぎょう)・松野検校作曲。京風手事物(てごともの)の代表曲ともいわれ、曲はつややかで叙情味に富む。三絃(さんげん)は二上(にあが)り。箏(こと)は平調子。遊女の不本意な寄る辺のない日々の生活に、投げやりなすてばちの心情を吐露した歌詞で、止(と)めの語句が曲名になっている。「夢か浮世か浮世が夢か」の冒頭の部分は義太夫(ぎだゆう)『壺坂(つぼさか)霊験記』沢市(さわいち)内の段の冒頭で、もの寂しい情景を添える置唄(おきうた)として用いられている。

[林喜代弘]

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