マリタン(読み)まりたん(英語表記)Jacques Maritain

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マリタン」の意味・わかりやすい解説

マリタン
まりたん
Jacques Maritain
(1882―1973)

フランスの哲学者。パリに生まれる。1913年よりパリ・カトリック学院の教壇に立つ。第二次世界大戦中はカナダ亡命。1945~1948年駐バチカン市国大使。1948年よりアメリカのプリンストンその他の大学に籍を置いて活躍、1961年帰国した。彼は初めソルボンヌ大学(パリ大学)で哲学と自然科学を学んだが、やがてベルクソンの「生の哲学」に傾倒した。だがカトリックに入信し、聖トマスの教説に接して開眼するとともにベルクソン哲学とも決別した。彼は一般に新トマス主義者とよばれている。著書も多く、また論じたテーマも各方面にわたり、日本でも戦前岩下壮一(いわしたそういち)、吉満義彦(よしみつよしひこ)などのカトリック系哲学者たちに大きな感化を与えた。

[西村嘉彦 2015年6月17日]

『三嶋唯義著『ジャック・エメ・アンリ・マリタン』(澤瀉久敬編『現代フランス哲学』所収・1968・雄渾社)』『Jean DaujatMaritain un maître pour notre temps (1978, Téqui, Paris)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マリタン」の意味・わかりやすい解説

マリタン
Maritain, Jacques

[生]1882.11.18. パリ
[没]1973.4.28. ツールーズ
フランスの哲学者。ネオトミズムの代表者の一人で,同時に哲学の全領域にわたって自説を展開している。パリ大学で自然科学と哲学を学び,のちベルグソンを知って形而上学に開眼。 1904年詩人ライサと結婚し,06年2人でカトリックに入信。 06~08年ハイデルベルクのドリーシュのもとで生物学を学び,パリに帰ってからはベルグソンを批判,トマス哲学への傾斜を深めた。 14~39年パリのカトリック大学の近代哲学の教授。 33年からカナダ,トロントの中世研究学院の教授となり,41~42年アメリカのプリンストン大学,41~44年コロンビア大学の客員教授をつとめた。 45~48年バチカン駐在のフランス大使,48~60年プリンストン大学哲学教授。 58年ノートル・ダム大学にジャック・マリタン・センターが創立された。主著『ベルグソン哲学』 La Philosophie bergsonienne (1913) ,『芸術スコラ哲学』 Art et scolastique (20) ,『認識段階』 Distinguer pour unir,ou les degrés du savoir (32) ,『道徳哲学』 La Philosophie morale (60) 。

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