日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルコム・エックス」の意味・わかりやすい解説
マルコム・エックス
まるこむえっくす
Malcom X
(1925―1965)
アメリカの黒人解放運動の急進派の指導者。ネブラスカ州オマハに生まれる。学校を中退し、21歳のとき強盗罪で投獄され(1946~1952)、獄中でブラック・ムスリムに入信。名前もマルコム・リトルからマルコム・エックスに改めた。X(エックス)とは、「以前の」を示すex-(エクス)の象徴である。釈放後はブラック・ムスリムの献身的活動家となったが、差別され抑圧された黒人の怒りや憤りを大胆に表明した彼の言辞とその雄弁は、ゲットーに住む黒人青年に大きな影響を与え、一躍彼は、その師エライジャ・ムハンマドをも上回る教祖的存在となった。マルコム・エックスはしだいにブラック・ムスリムの分離主義的傾向に反発を深め、1964年にはブラック・ムスリムを去って自らの組織ムスリム・モスク・インクを創設した。さらにメッカをはじめ中東、アフリカ各地の見聞を転機に、非宗教的で非宗派的な黒人解放組織「アフリカ系アメリカ人統一機構」Organization of Afro-American Unityを設立したが、1965年2月、ニューヨークで暗殺された。
[大塚秀之]
『濱本武雄訳『完訳マルコムX自伝』上下(中央公論新社)』▽『アレックス・ヘイリー著、浜本武雄訳『マルカムX自伝』(1968・河出書房新社)』▽『荒このみ著『マルコムX――人権への闘い』(岩波新書)』