マルチ商法(読み)まるちしょうほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルチ商法」の意味・わかりやすい解説

マルチ商法
まるちしょうほう

多層販売法multi-level marketing planの略式訳語。ピラミッド販売pyramid salesともいい、俗にねずみ講式販売とか人狩り商法ともいう。販売会社が加盟者に商品を卸す形で発足するが、加盟者が販売員となって新加盟者を連れてくると元の加盟者は昇進し(これをリクルートという)、報奨を得ることができる。このようにして次から次へと加盟者を増やす活動が反復され、組織は雪だるま式に膨張する。このような拡大の推進力となる報奨は、自分が連れてきた新加盟者の支払う加盟金の一部または全部、もしくは新加盟者の商品仕入れによる卸売利益のうちの勧誘成功報酬分である。このような商法は、物が売れるか否かに関係なく組織が拡大し、組織の拡大につれて上層部の人間はいながらにして金銭を手にするのに対し、末端加盟者は在庫を抱えざるをえないなど、人口が無限にいない限り、最末端加盟者や消費者に被害を生み出すことになる。日本では昭和40年代に流行したが、組織拡大の行き詰まりによる被害者増加、取扱商品の欠陥などのトラブルが多発したため、1976年(昭和51)訪問販売法が制定され、同法により連鎖販売取引という名称もとに厳しく規制されることになった。1980年3月、大阪地方裁判所は、マルチ商法を行った会社に対する被害者の損害賠償請求訴訟について、マルチ商法を違法とし民事賠償を命ずる判決を初めて下した。なお訪問販売法は、2000年(平成12)に特定商取引法(昭和51年法律第57号)に改称された。また同法とは別にねずみ講禁止法(昭和53年法律第101号)が施行され、商取引を伴わないねずみ講も禁止されている。

[森本三男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マルチ商法」の意味・わかりやすい解説

マルチ商法
マルチしょうほう

マルチ・レベル・マーケティングシステム multilevel marketing systemの略称通常,訪問販売の方法により行なわれるが,ねずみ算式に販売員を増やしていくため「ねずみ算セールス」と呼ばれることもある。販売員は販売会社に一定額を投資して権利を取得し,会社から購入した商品を直接小売りする利益と新販売員を勧誘して会社からの紹介料と新販売員への商品卸しによる中間マージンの利益を受けられる。このため商品販売より新販売員獲得による組織拡大に重点がおかれることとなり,種々のトラブルが発生しており特定商取引法では「連鎖販売取引」として規制されている。

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