悪徳商法(読み)アクトクショウホウ

デジタル大辞泉 「悪徳商法」の意味・読み・例文・類語

あくとく‐しょうほう〔‐シヤウハフ〕【悪徳商法】

高額の利息が付くとか、有利な資格が取れるなどと言って客から金銭をだまし取るやり方。訪問販売や電話販売など方法は多種多様。悪質商法問題商法。→クーリングオフ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「悪徳商法」の意味・わかりやすい解説

悪徳商法
あくとくしょうほう

正当な販売行為を装いながら行われる悪質な詐欺的商法。悪質商法、問題商法ともいう。悪徳商法は、1980年代のバブル経済、財テクブームの社会情勢を背景とし、消費者たちの少しでも有利な資産運用を求める風潮に乗じて発生し蔓延(まんえん)した。社会経済の状勢の推移とともに次から次へと新しい形態、方法による悪徳商法が生まれてきており、そのトラブルも悪質、複雑になってきている。近年では、マルチメディア時代の到来を背景に、パソコン通信やインターネットを利用した電子詐欺事件も発生するようになった。2008年(平成20)の全国の消費生活センター、国民生活センターに寄せられた相談件数は約94万8500件で、その8割が契約・解約関係、その多くが悪徳商法に関連していた。

岩井弘融

悪徳商法の種類

おもな悪徳商法の例を以下に記述する。

(1)マルチ・マルチまがい商法(連鎖販売取引) ピラミッド式の販売組織に加入している会員(販売員)が、特定利益を得るために友人・知人等を誘引して加入者を増やし、商品を販売していく商法。思うように売れず多額の借金・在庫を抱えるケースが多い。

(2)商品介在型ねずみ講(無限連鎖販売) 商品が介在していない非合法な金銭配当組織であるねずみ講が、カムフラージュするために、商品らしきものを介在させて行う商法。

(3)現物まがい商法(ペーパー商法) 金の地金、ゴルフ会員権などを販売すると称して預り証だけを交付し、運用利益を支払うという口実のもとに元金を着服する商法。

(4)原野商法 財産的価値のない山林・原野を高値で売りつける商法。

(5)利殖商法(財テク商法) 「高利回り」「値上がり確実」と儲かることを強調して貯蓄・投資をさせる商法。

(6)先物取引商法 投資客が取引きの仕組みを理解していないことに乗じて、強引に契約させたり、解約に応じないなど、勧誘・契約方法に問題のある商法(先物取引自体は適法な商行為)。ダミー会社を使って委託保証金の取り込み詐欺をはたらく偽海外先物取引業者もいる。

(7)アポイントメントセールス 電話やハガキで約束をとりつけて呼び出し、会員特典を強調し、商品やサービスの契約をさせる商法。

(8)キャッチ商法 路上でアンケート調査などを口実に接近し、商品やサービスの契約をさせる商法。

(9)無料商法 無料サービス、無料体験などで人を集め、高額商品・サービスを売りつける商法。

(10)催眠商法SF商法) くじ引きや景品などで会場に人を集めて密室状態にし「数に制限がある」とあおり高額な商品を買わせる商法。

(11)送りつけ商法(ネガティブ・オプション) 注文を受けていないのに商品を一方的に送りつけ、その人が断らなければ買ったものとみなして、代金を請求する商法。

(12)かたり商法 水道局や消防署など公的機関の関係者を装って消費者を信用させ、商品を売り付ける商法。

(13)点検商法 住居や消火器などの点検を口実に訪問し、危険な状態などと不安をあおって、別の商品・サービスを契約させる。

(14)工事商法 住宅ローンを絡ませた家屋リフォームなどを持ちかける商法。家の外回り工事を「見本になるので格安で」といいくるめる見本工事商法もある。

(15)資格商法 電話勧誘により偽りの資格取得講座教材を売りつける商法。

(16)内職商法 「在宅ワークで高収入」などの広告で勧誘し、高額な教材やパソコンなどを購入させる商法。

(17)霊感商法(開運商法) 先祖の祟(たた)りを除くなどと称して、印鑑・壺(つぼ)・霊石などを高価で買わせる商法。

(18)整理屋商法 新聞の広告などで多重債務者を集め、債務整理をするという口実のもとに多額の手数料をとる商法。

(19)デート商法 異性間の感情を利用し、デートを装って高額商品を販売する商法。

(20)ワン切り商法 携帯電話の呼び出し音を1回鳴らして切り、相手の電話機に着信履歴を残し、その着信番号に折り返しかけてきた相手の電話回線を、アダルト系業者などの高額なサービスへ着信転送させ、不当請求するという詐欺商法。

[岩井弘融]

対策

悪徳商法から消費者を守るため、1976年訪問販売法が制定され、その後何度か改正が重ねられてきた。1988年の改正で書面で無条件に解約できるクーリング・オフの期間が8日に延び、現金取引にも適用されることになった。1996年(平成8)の改正では電話勧誘販売と連鎖販売取引(マルチ商法)のクーリング・オフ期間を20日にした。さらに、2000年(平成12)の大改正では被害の実情にあわせて規制対象が拡大され、特定商取引法と改称された。また、消費者の契約トラブルを防止・解決するための包括的民事ルールの立法化が進められ、2000年に消費者契約法が制定された。

 2008年には警察庁が「生活経済事犯対策推進要綱」を作成、さらに「悪徳商法関係省庁連絡会議」「集団投資スキーム(ファンド)連絡協議会」などを設け、情報の共有、連携活動を図っている。一方、各都道府県には「悪徳商法110番」などの消費者相談窓口が設置されている。しかしその対策の第一は、なによりもまず消費者が自衛意識を強くもつことであり、怪しいと思ったら、ただちに警察や公私の消費生活センターなどの窓口に相談することである。

[岩井弘融]

『青年法律家協会神奈川支部編『悪徳商法にご用心』(1988・日本評論社)』『宗教と消費者弁護団ネットワーク編著『宗教名目による悪徳商法』(1996・緑風出版)』『野尻義明著『なんでだまされるの?――悪徳商法の手口と対策』(1997・主婦の友社)』『垣口克彦著『消費者保護と刑法――悪徳商法をめぐる犯罪』(2003・成文堂)』『高田橋厚男著『悪徳商法の手口を見抜く!!――住民の消費生活に役立つ事例から学ぶ実戦ノート』(2005・ぎょうせい)』『木村晋介著『ご用心! 巷にあふれるいい話――「悪徳商法」撃退法』(岩波ブックレット)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「悪徳商法」の意味・わかりやすい解説

悪徳商法
あくとくしょうほう

消費者に対して組織的,反復的に行なわれる商取引で,違法または不当な利益を得る商法。悪質商法ともいう。手口は,会場に集めた人々を興奮状態にして商品を買わせる催眠商法(SF商法),商品購入者が販売者の権利を得て新たな購入者を募るマルチ商法,住宅等の点検を偽って不要な工事を行なう点検商法,虚偽の投資をさせる利殖商法など多様。こうした犯罪から消費者を守るため,消費者基本法,消費者契約法,訪問販売法(訪問販売等に関する法律),無限連鎖講防止法,特定商取引法割賦販売法などが制定されている。近年は住宅リフォームなどを持ちかけ,判断力の劣る高齢者や障害者をねらった犯罪が深刻になっている。内閣府は 2006年に消費者トラブルの予防,早期発見,被害の拡大防止を目的とするメールマガジン「見守り新鮮情報」を発行,2008年4月からこの事業を国民生活センターに移管した。

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