改訂新版 世界大百科事典 の解説
マーチャント・アドベンチャラーズ
Merchant Adventurers
イギリス中世末期から近世にかけて毛織物(未仕上げ広幅織)輸出を独占した貿易商人で,マーチャント・アドベンチャラーズ組合(冒険商人組合)を組織した。14,15世紀に台頭しステープル商人を後退させ,またハンザ,イタリア商人など外国商人を駆逐して,イギリス毛織物工業の発達を促した国民的商人である。ロンドン,ハル,ヨーク,エクセター,ブリストルなど国内各地の拠点におのおの独自の組織を形成していたが,1564年エリザベス女王からの特許状によって統一的な組合を形成した。本部は外国におかれたが,ロンドン商人が中心的役割を果たし,ロンドンからアントワープ,ついでアムステルダムへの毛織物輸出が決定的な重要性をもった。巨大な財力をもつこれらの商人は王室にとって重要な財源であった。17世紀に入って三十年戦争による大陸市場の混乱と,イギリス毛織物の新毛織物(ウーステッド織)への転換の中で衰退した。
執筆者:坂巻 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報