日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミノガ」の意味・わかりやすい解説
ミノガ
みのが / 蓑蛾
bagworm moth
昆虫綱鱗翅(りんし)目ミノガ科Psychidaeのガの総称。全世界に分布するガで、幼虫が蓑(みの)(ポータブルケース)をつくってその中にすむ、いわゆるミノムシで、成虫はミノガとよばれている。はねの開張10ミリメートル以下から40ミリメートルに達するものまである小形種から中形種。はねの形はさまざまであるが、豊かな色彩や斑紋(はんもん)をもつ種はなく、はねが透明な種を除いてすべて茶褐色、黒褐色あるいは黒色をしている。夜間、灯火に飛来することは少なく、昼間飛ぶ種が多い。この科の雄成虫はすべてはねをもち、一般のガと変わりがないが、雌の特徴から三つのグループに大別することができる。すなわち、雌が雄と同じように2対のはねと3対の脚(あし)を有するもの、はねはないが脚を有するもの、はねも脚もないものである。はねのない雌は、成虫になると自分の殻から半身を乗り出すか、蓑の外側で交尾のために飛来する雄を待つが、はねも脚もない雌は蓑の中で飛来した雄と交尾し、蓑の中に産卵する。したがって、雄の腹部はよく伸長できるようになっている。幼虫は種ごとに独特の材料で独特の蓑をつくり、上方の開口部から頭や胸を出して餌(えさ)をとる。蓑の材料は、食樹の小枝、茎、葉などを糸で綴(つづ)るが、コケや地衣類に寄生する小形種のなかには、植物片や土片を表面に付着させるものもある。
日本には現在20種ほどしか知られていないが、コケや地衣類につく微小種で未発見のものが多く、今後、研究が進むと日本産は40種を超えるものと推定される。ごく普通にみかける最大のオオミノガは、幼虫が庭木、街路樹、果樹などに寄生し、発生量の多いときはかなりの被害がある。各種の樹木や低木につくチャミノガは、前種と同様に害虫であり、チャ畑で発生することがある。
[井上 寛]