街路樹(読み)ガイロジュ(英語表記)street tree

デジタル大辞泉 「街路樹」の意味・読み・例文・類語

がいろ‐じゅ【街路樹】

街路に沿って並べて植えてある樹木。
[類語]並木

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精選版 日本国語大辞典 「街路樹」の意味・読み・例文・類語

がいろ‐じゅ【街路樹】

  1. 〘 名詞 〙 景観や保健などの見地から、街路に沿って植えてある木。〔新らしい言葉の字引(1918)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「街路樹」の意味・わかりやすい解説

街路樹 (がいろじゅ)
street tree

都市の市街地内の道路に,都市景観をよくし,都市環境の保全・向上をはかり,さらに直接には防風,防塵,防煙,防暑,防火などに役だつことを目的として植えられた樹木をいう。現実には,街路の歩道の車道際またはとくに設けられた植樹帯に一定の間隔をおいて並木として列植されることが多い。街路樹は,市街地内の石やコンクリートなど無機物の多い景観に,暖かいいきいきとした美しさをもたらし,人々に安らぎを与えるものである。

都市は植物の生育環境としては全般的に悪い。気象条件からみると,日照は高層建築物などにより遮られることが多く,また大気汚染により弱められる。また,路面や建築物からの反射による下方など各方向からの光は植物に有害な影響を与え,さらに夜間の照明は植物の生理作用を乱す。気温も都心部は高くなり,また昼夜の温度差も小さくなるので,植物の消耗も大きくなる。風も高層建築物周辺などにビル風といわれる強風が発生する。土壌条件をみても,良好な土壌は少なく,乾燥し,硬く,養分は欠乏し,しばしばアルカリ性になる。

都市の悪環境に耐えて生育できる樹木の種類は多くはない。街路樹として適合する条件を次に示す。(1)道路幅の広い場所や暖地以外ではなるべく落葉樹が望ましい。(2)樹形が整い,葉の形状が美しく,夏に快適な緑陰をつくる。(3)性質強健で,生長が盛んである。(4)環境によく適応し,悪い条件にもよく耐える。(5)繁殖が容易で,苗木を大量に生産することができる。(6)移植しやすく,よく活着する。(7)刈込みや剪定(せんてい)によく耐え,萌芽(ほうが)力も大きい。(8)病虫害が少ない。(9)人畜無害である。以上の条件の多くに合い,街路樹としてよく使われる種類を次に挙げる。カイヅカイブキキョウチクトウクスノキクロマツ,トウジュロ,マテバシイ(以上常緑樹),アオギリイタヤカエデ,イタリアポプラ,イチョウイロハモミジエンジュ,カロリナポプラ,ケヤキシダレヤナギシナサワグルミシラカンバスズカケノキセイヨウハコヤナギ(ポプラ),ソメイヨシノトウカエデトチノキトネリコバノカエデ,ナナカマド,ナンキンハゼ,ニセアカシアニワウルシ,フウ,モミジバスズカケ,ヤチダモ,ユリノキ(以上落葉樹)。なお,地方色を出すために,郷土植物や産業に結びつく種類などが用いられることも多く,ヤブツバキ(伊豆大島元町),クワ(八王子市),リンゴ(飯田市)などがその例である。

街路樹の歴史は古く,都市計画により整然とした街路をもった都市では,景観をよくするために早くから街路樹が使われていたと考えられる。中国では,唐の長安の都に楊柳(ようりゆう),槐(えんじゆ)などが用いられ,日本でも藤原京,平城京から平安京に至るまでに,街路樹としてタチバナをはじめとしてヤナギ,サクラ,エンジュなどが植えられていたようである。近代では,1872年に東京の銀座にマツ,サクラが植えられ,さらに75年には外来種であるニセアカシアが用いられ,その後種類も増加し,1907年にはイチョウ,スズカケノキ,ユリノキ,アオギリなど現在みられる街路樹の多くが使われるようになった。外国の例ではパリのマロニエ,ベルリンのリンデンバウムなどが有名。

街路樹の植栽には土壌の改良が必要であり,一定の大きさのわく内に植えられることが多いが,できる限りその面積を大きくとるようにする。植栽後は支柱を必要とすることが多い。都市の悪環境下に生育するので,その保護・管理は重要である。根もとの土壌が固まらないように表面の耕起,被覆を行い,施肥をする。樹形を整え,風倒を防ぐなどの理由で刈込み,剪定を行うが,本来樹木は大きく育てることによって樹木を強健にし,都市の景観をよくするものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「街路樹」の意味・わかりやすい解説

街路樹
がいろじゅ

市街地の道路の両側に列植された樹木をいう。日本では一般に並木と街路樹とが混同されることが多いが、外国では通常、市街並木すなわち街路樹と、地方並木(並木)とは区別されている。なお、並木とは高木を列植したものをいい、低木の場合は並木とはいわない。

 街路樹は、普通、同一樹種が等間隔に植えられるが、ときには異なった樹種が混植されたり、不規則に植えられることもある。街路樹の効用としては、大気の浄化、炭酸ガスの吸収と酸素の供給といった環境衛生的な側面にあわせて、緑陰、寒暑の調節といった効用もある。さらには、風致美観ならびに保安、道標などの効用がある。しかし、路面の損傷、住居の日照、落葉の被害、交通障害、溶雪作業の妨害といったマイナス面の指摘されることもある。

 世界でもっとも古い街路樹は、約3000年前にヒマラヤ山麓(さんろく)につくられた街路グランド・トランクであろうといわれる。これはインドのコルカタ(カルカッタ)からアフガニスタンの国境にかけての幹線の街路であり、一部は舗石を敷き詰め、中央と左右の計3筋に並木が連なっていたという。中国では約2500年前の周(しゅう)時代にすでに壮大な並木、街路樹がつくられていた。

 日本の並木、街路樹の起源も古く、『日本書紀』によると、敏達(びだつ)天皇(在位572~585)のころ難波(なにわ)の街路にクワが植えられたとある。聖武(しょうむ)天皇(在位724~749)のときには、平城京にタチバナとヤナギが植えられている。さらに遣唐使として入唐(にっとう)した東大寺の僧普照(ふしょう)が754年(天平勝宝6)に帰朝し、唐の諸制度とともに並木、街路樹の状況を奏上し、759年(天平宝字3)に太政官符(だいじょうかんぷ)で街路樹を植栽することが決められた。これが行政上の立場から街路樹が植えられた始まりである。桓武(かんむ)天皇(在位781~806)時代には、平安京にヤナギとエンジュが17メートル間隔に植えられ、地方には果樹の植栽が進められた。その後、鎌倉時代にはサクラ、ウメ、スギ、ヤナギが植えられている。江戸時代になると、各地にマツ、スギ、ツキ(ケヤキの古名)などが植えられた。

 近代的な街路樹は、1867年(慶応3)に横浜の馬車通りにヤナギとマツが植えられたことに始まる。1874年(明治7)には東京の銀座通りにサクラとクロマツが植えられたが、木の成長が悪く、1884年になってシダレヤナギに植えかえられている。1907年(明治40)になると、白沢保美(しらさわほみ)、福羽逸人(ふくばはやと)の街路樹の改良計画に基づいて、イチョウ、スズカケノキ、ユリノキ、アオギリ、トチノキ、トウカエデ、エンジュ、ミズキ、トネリコ、アカメガシワの10種が街路樹として選定・植栽され、ほぼ今日の街路樹体制の基ができあがった。のちにイヌエンジュ、シダレヤナギ、ソメイヨシノ、ミツデカエデが追加され、ミズキ、アカメガシワは成績不良で廃止された。

 1977年(昭和52)の調査(林弥栄ほか)によると、東京都23区内の街路樹総本数は15万5000本、三多摩地区5万1000本、総計20万6000本である。このうち、本数の多い樹種はイチョウ、プラタナス、トウカエデ、シダレヤナギ、エンジュ、サクラ、ケヤキの順となっている。また、全国主要都市160の街路樹は、1967年の調査によると、105種、総本数52万本であった。本数の多い樹種を順にあげると、プラタナス、イチョウ、シダレヤナギ、ニセアカシア、カロリナポプラ、ソメイヨシノ、アオギリとなる(両調査以降、新しい調査は行われていない)。世界各国における街路樹種は200種に達し、もっとも広く用いられているのはポプラ類、プラタナス類、シナノキ類、ニレ類であり、これを世界四大街路樹とよんでいる。次いで多いのはニセアカシア類、カエデ類、トチノキ類である。

 街路樹の選定にあたっては、その地方の気候風土に適応し、樹性強健で、大部分の土地で生育でき、乾燥に耐え、大気汚染などのいわゆる公害に対して抵抗力のあるものが望まれる。さらには、太陽熱、反射熱や病害虫に強く、深根性の樹種が選ばれる。

 また、有毒、不快な臭気、刺(とげ)、有害液などを出さないという環境衛生的な面や、剪定(せんてい)、整枝によく耐え、上長成長が早く、まっすぐな樹幹をなし、下枝がよくそろい、樹形が整然として優美であるといった美観の面も考慮される。専門的には、大量な育苗栽培が可能で、しかも移植が容易で活着後の生育のよいものが街路樹としての条件となる。

[林 弥栄]

『本間啓監修『世界と日本の街路樹』(1982・日本交通公社)』


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百科事典マイペディア 「街路樹」の意味・わかりやすい解説

街路樹【がいろじゅ】

街路に一定の間隔で植えられた樹木。都市に美観を与え,夏に日陰をつくり,大気を清浄化するなどの役目をする。樹種は樹齢が長く,病虫害に抵抗性が強く,都市特有の大気汚染や踏み固められた地面に耐える落葉樹であることが要求される。日本で多いのはイチョウ,アオギリ,スズカケノキ(プラタナス),エンジュ,ハリエンジュ(ニセアカシア),ユリノキ,トチノキなど。

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世界大百科事典(旧版)内の街路樹の言及

【並木】より

…景観の美化,緑陰,防風,防火,防音,防塵などを目的とし,里程標とされることもある。市街地の場合は街路樹と呼ばれる。
[日本]
 奈良時代の759年(天平宝字3)に東大寺の普照の奏状により五畿七道の駅路の両側に果樹を植えさせ,木陰を旅人の休息場とし,木の実を食料とさせる官符が出ているのが街道の並木の始まりとされ,平安時代にも引き続き果樹が植えられている。…

※「街路樹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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