日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミノタウロス」の意味・わかりやすい解説
ミノタウロス
みのたうろす
Minotauros
ギリシア神話の怪物。ゼウスの子ミノスが政敵の反対を押さえてクレタの王となるとき、ミノスは神とのつながりを誇示するために、犠牲の牛を海から出現させてくださいとポセイドンに祈る。神は白い牡牛(おうし)を送るが、ミノスはこの美しい牛を犠牲にするのが惜しくなり、隠してしまう。怒ったポセイドンは罰として、ミノスの妃(きさき)パシファエをこの牡牛への邪恋に狂わせる。工匠ダイダロスに精巧な牝牛(めうし)の模像をつくらせた王妃は、それに忍んで牡牛と交わり、牛頭人身の怪物ミノタウロス(ミノスの牛の意)を産む。ミノスは、この怪物をダイダロスのつくった迷宮ラビリントスに閉じ込め、属国のアテナイ(アテネ)から送られてくる人身御供(ひとみごくう)の少年少女を食わせて養った。しかし、やがて人身御供のなかに紛れ込んだアテナイの王子テセウスにより退治される。クレタでは神的な王が牛の姿で王妃と神聖婚の儀式を行ったことから、このような神話が生まれたかとも考えられている。
[中務哲郎]