ラビュリントス(英語表記)labyrinthos; labyrinth

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラビュリントス」の意味・わかりやすい解説

ラビュリントス
labyrinthos; labyrinth

複雑な構造のため,一度中に入ると容易に出られないという伝説上の建物,またはそれを象徴化した図案。伝説ではクレタ島の王ミノスの妻パシファエが牡牛によって牛頭人身の怪物ミノタウロスを生み,王はダイダロスに命じてラビュリントスを造らせ,ミノタウロスを幽閉したとされるが,これにあたる遺跡は発見されていない。またギリシアの歴史家ヘロドトスが『歴史』に記述したエジプトのラビュリントスは,複雑な建物であるが,迷宮を意図して造られたものではないらしい。ラビュリントスは早くから文様として記号化され,紀元前2世紀のクノッソス貨幣に刻まれている。また古代ローマの住宅や中世の大聖堂の床面にはラビュリントスの図案がモザイクとしてはめこまれたが,迷い道や行止りがなく,一筆描きであった。これらは災いを逃れるまじない苦行のしるしとされ,「エルサレムへの道」と呼ばれる聖堂のものは,信者が外周部から中心まで祈りながら膝行するので,エルサレムへの巡礼にたとえられた。バロックの時代になって,迷い道や行止りのある迷路が登場し,各地の庭園に遊びの場として造られるようになった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報