改訂新版 世界大百科事典 「ムカシゴカイ」の意味・わかりやすい解説
ムカシゴカイ (昔沙蚕)
多毛綱ムカシゴカイ目Protodrilida原始環虫綱Archiannelidaに属する環形動物の総称,またはそのうちの1種を指す。ムカシゴカイSaccocirrus major(=S.uchidai)は北海道と本州の岡山以北に分布し,潮間帯の砂れきの間に生息する。体長15~27mm,体幅0.3~0.4mmの糸状で,65~145体節をもつ。体色は黄褐色で,緑褐色の消化管が体表からわかる。前口葉はほぼ三角形で,暗赤色の小さい眼点が1対ある。前口葉の側面より長さ1~1.5mmの感触手が生じ,感触手は中空で側縁がひだ状になっている。前口葉の後方に1対の感覚溝がある。囲口節は大きく,口は縦に長い。各体節の両側には小さな円筒状のいぼ足があり,各剛毛束には4種類の剛毛が含まれている。肛環節は二叉に分かれ,おのおのの腹側に12~23個の粘着性の葉状体がある。雌雄異体で,雌雄それぞれの生殖巣は第13~23剛毛節から生じてほぼ体末端まで続き,一般に腸の左側に発達する。
生殖時期は北海道で6~7月。受精後1日半でトロコフォラ幼生になって遊泳を始め,ほぼ8体節になってから変態して底生生活に入る。
日本にはこのほかにS.labilisが紀伊半島から,S.kuroshioalisが九州,沖縄から知られている。またイイジマムカシゴカイPolygordius ijimai,ユリネムカシゴカイP.pacificusなども潮間帯でふつうに見られる。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報