改訂新版 世界大百科事典 「ムチモ」の意味・わかりやすい解説
ムチモ (鞭藻)
Cutleria cylindrica Okamura
体は円柱状で細長く,長さ30~50cmになり,先端に多数の小毛を総状につけて馬のむちを思わせる形状の褐藻。叉(さ)状に分枝し,老成すると総状の小毛は脱落する。日本および韓国沿岸に分布し,日本では太平洋沿岸中南部,瀬戸内海および九州沿岸の低潮線付近の岩上またはタイドプールに,春から初夏に生育する。晩春のころに体の表面に暗褐色のいぼ状突起が一面に形成されるが,これは有性生殖器官で,これから泳ぎ出た雌雄の配偶子は接合すると発芽して岩にへばりつく盤状発生体となる。近縁種のヒラムチモC.multifida (Smith) Grevilleについてヨーロッパで行われた研究によると,この盤状体はアグラオゾニアAglaozoniaの名で呼ばれていた別の海藻と同一物に発達するという。すなわち,ヒラムチモとアグラオゾニアの間で世代交代が行われていることになる。日本のムチモの生活史はまだ明らかになっていない。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報