めでたい

精選版 日本国語大辞典 「めでたい」の意味・読み・例文・類語

めでた・い

〘形口〙 めでた・し 〘形ク〙 (動詞「めでる(愛)」の連用形「めで」に「いたし」の付いた「めでいたし」の変化したもの。ほめたたえることがはなはだしい、すなわち、対象にたいへん心がひかれ、好み愛する気持になっていることを表わす。「目出度」「芽出度」などの字をあてることもある)
① 見た目に魅力的な状態で、ほめたたえるに値する。立派である。見事である。結構である。すばらしい。
(イ) 人物についていう。
※竹取(9C末‐10C初)「かぐや姫もとのかたちに成ぬ。御門、なほめでたく思し召さるる事せき止めがたし」
(ロ) 人の容姿、振舞などについていう。
※竹取(9C末‐10C初)「かぐや姫かたちの世に似ずめでたき事を、御門きこしめして」
※宇津保(970‐999頃)内侍督「御髪つくろひ、かしづきたてる様、めでたき事限りなし、いとうつくしげなり」
(ハ) 一般の事物についていう。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「銀(しろかね)透箱のいと清らなるに、敷物などいとめでたし」
(ニ) 自然の風物についていう。
※千里集(894)「白雲の中を分けつつ行暮のめてたきことは山にぞありける」
② 食べ物の味がすぐれている。うまい。おいしい。
大和(947‐957頃)一七三「よろづの物食へども、なほ五条にてありし物は、めづらしうめでたかりきと、思ひいでける」
③ 声や音などが、趣があってすぐれている。よい。
※大和(947‐957頃)一六八「声いと尊くめでたう聞ゆれば、ただなる人にはよにあらじ
④ すぐれていて、崇め尊ぶに値する。非常に尊い。ありがたい。
落窪(10C後)三「八講なむ、此世もいと尊く、後のためもめで度あるべければ、して聞かせ奉らまほしき」
梁塵秘抄(1179頃)二「神のめでたく現ずるは、金剛蔵王ははわう大菩薩」
⑤ 評判・権勢待遇などの度合がすぐれている。よい。
※落窪(10C後)三「こはいかに。此殿にはかくめでたきおぼえにては侍ひ給ひけるぞ」
⑥ 書、絵、和歌などが、すぐれている。上手である。うまい。
※栄花(1028‐92頃)月の宴「道風などいひける手をこそは、世にめでたき物にいふめれど」
物事のしかた・ありかたが、すぐれている。上手である。うまい。
※梁塵秘抄(1179頃)二「よくよくめでたく舞ふものは、巫小葉車の筒とかや」
⑧ 物事が望ましい状態で、喜び祝うに値する。喜ばしく、結構である。近世現代では、接頭語「お」を付けた「おめでたい」の形で用いることが多い。
(イ) 幸福・幸運の、度合が高くて、喜ばしい
源氏(1001‐14頃)浮舟「宮のうへこそ、いとめでたき御さいはひなれ」
(ロ) しあわせである。栄えている。うまくいっている。
※栄花(1028‐92頃)月の宴「醍醐聖帝とまして、世の中に、天の下めでたき例にひき奉るなれ」
(ハ) 幸運である。好都合である。ありがたい。
※源氏(1001‐14頃)真木柱「おほきおとどを、めでたきよすがと思ひ聞え給へれど」
(ニ) 物事が、うまくいったり、思い通りである。また、その結果喜ばしいと思うさまをいう。首尾よい。
※落窪(10C後)三「中納言忽ちに御心地もやみて、めでたし」
(ホ) 人や物事の状態が、祝い喜ぶに値する。また、よい事が予想されたりして、喜ばしい。
※落窪(10C後)一「四の君もまた御婿取し給はんと設け給ふめりと〈略〉めでたきや、誰をか取り給ふ」
平家(13C前)三「今度さしも目出たき御産に、大赦は行なはれたりといへ共」
⑨ お人よしである。ばか正直である。また、愚かである。皮肉をこめた言い方に使われることが多い。現代では「おめでたい」の形で用いる。
※茶屋諸分調方記(1693)六「めでたきお客はそれでもよろこびあがり給ふ」
めでた‐が・る
〘他ラ五(四)〙
めでた‐げ
〘形動〙
めでた‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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