メリルリンチ(読み)めりるりんち(その他表記)Merrill Lynch & Co., Inc.

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メリルリンチ」の意味・わかりやすい解説

メリルリンチ
めりるりんち
Merrill Lynch & Co., Inc.

アメリカの総合証券会社。2009年、バンク・オブ・アメリカに吸収された。1914年にチャールズ・メリルCharles E.Merrill(1885―1956)によりチャールズ・E・メリル商会Charles E.Merrill & Co.が設立され、翌年エドモンド・リンチEdmund Calvert Lynch(1885―1938)を共同経営者としてメリルリンチ商会Merrill Lynch & Co.が誕生する。鉄道建設や公共事業などの巨大事業への投資が盛んであったなか、チェーン・ストア、映画など伸び盛りの業界への投資に力を注ぎ、1920年代には急成長を遂げた。しかし1929年の大恐慌後、個人顧客支店をピアス商会E.A.Pierce & Co.に譲渡し事業を著しく縮小。しかし、1940年には経営の傾いたピアス商会からの合併要請を受け、ふたたび表舞台に返り咲く。翌年、アメリカ最大の商品取引会社で大手証券取引業者のフェンナー・アンド・ビーン社と合併し、1950年代にはアメリカ最大の証券会社に成長した。1960年代に入り、同社は中心であったリテール業務から法人をおもな顧客としたホールセール業務(投資銀行業務)への進出を果たした。その後、吸収合併を繰り返し、1973年持株会社として社名をメリルリンチとする。1990年代のアメリカ株式市場の活況は、業界を代表する同社の収益を増大させた。1993年の総収入は165億8800万ドル、純利益は13億9400万ドルであったが、1996年において総収入は50.8%増の250億1100万ドル、純利益は16.1%伸びて16億1900万ドルを記録した。業界最大数の株式ブローカーを国内650支店と30か国以上にもち、オープンエンド型投資信託であるミューチュアルファンド事業においても大規模な展開をみせた。投資銀行業では、初公募、二次公募を行う企業や免税債券などを発行する政府機関の証券を購入し、ディーラーや一般顧客に販売した売買価格のマージンを収益とした。資産運用部門は規模が大きく事業も多角的に展開した。

 日本では、1998年(平成10)にメリルリンチ日本証券が設立されている。開業にあたっては、前年経営破綻(はたん)した山一証券の元社員約2000人を従業員として採用した。

[萩原伸次郎]

その後の動き

2008年6月末の顧客預かり資産は約1兆6000億ドルで、ゴールドマンサックスモルガン・スタンレーと並ぶアメリカ三大証券の地位を確立していた。しかし、サブプライムローン関連で2008年4―6月期までに419億5000万ドルの損失を計上。その後、みずほコーポレート銀行などから出資を受けたが、自主再建を断念。2008年9月にバンク・オブ・アメリカが救済合併し、その歴史を閉じた。

[編集部]

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百科事典マイペディア 「メリルリンチ」の意味・わかりやすい解説

メリルリンチ[会社]【メリルリンチ】

1973年に設立された世界最大級の証券会社。多角的な事業展開で知られ,子会社を通じて投融資業務や保険業務を遂行する米国の金融会社でもある。中心的な子会社のMerrill Lynch,Pierce,Fenner & Smith(MLPF & S)は証券業界のトップクラスにランクされている。世界37ヵ国770ヵ所に拠点を持つ。1998年には破綻した山一証券の店舗や人材を引き継いで,個人営業専門のメリルリンチ日本証券を設立した。2007年米国サブプライムローン問題に端を発する金融危機で,巨額の損失を計上,2009年1月バンクオブアメリカに総額500億ドルで買収される。

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