メントン(読み)めんとん(英語表記)menthone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メントン」の意味・わかりやすい解説

メントン
めんとん
menthone

モノテルペン系環状ケトンの一つ。化学構造上2個の不斉炭素原子を有しており、メントン(trans体)とイソメントン(cis体)の立体異性体と、それぞれの光学活性体(d-体とl-体)と不活性体(ラセミ体)の合計6種の異性体がある。メントンはペパーミント油、はっか脱脳油に含有されているが、主としてl-メントンであって、d-イソメントンは少量である。メントンは熱によりイソメントンに異性化するので、両者は共存している。メントンは合成されることはなく、はっか脱脳油を分留して得ている。ミント系調合香料、人造はっか油調合ゼラニウム油の調合に用いられる。

[佐藤菊正]


メントン(データノート)
めんとんでーたのーと

メントン/l-メントン

 分子式 C10H18O
 分子量 154.3
 融点  -5.7℃
 沸点  83~84℃/9~10mmHg
 比重  0.8895(測定温度25℃)
 旋光度 [α]-29°36′

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「メントン」の意味・わかりやすい解説

メントン
menthone



植物精油中に含有される飽和環状テルペンケトンの一つ。メントンは分子内に不斉炭素をもち,光学異性体が存在する。沸点207℃(l体),204℃(d体)。無色透明の液体で,水に微溶,アルコール,ベンゼン有機溶媒に可溶。l-メントンはハッカ油中に約20%含まれ,ハッカ特有の芳香をもち,比旋光度=-29.17°。合成香料原料として重要で,ラベンダー,ローズ,ゼラニウム等の調合香料,食品香料として用いられる。またメントール,チモールの合成原料となる。d-メントンはシソ科のケイガイの精油(1.8%),ミカン科のブッコ葉の精油成分として存在する。製法は天然物からの抽出のほか,l-メントンはl-メントールの重クロム酸混液の酸化により,d-メントンはl-メントンを濃硫酸やギ酸で低温で異性化させて得られる。最近その他の合成法も提案されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「メントン」の解説

メントン
メントン
menthone

[別用語参照]p-メンタン-3-オン

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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