日本大百科全書(ニッポニカ) 「モアタイムシステム」の意味・わかりやすい解説
モアタイムシステム
もあたいむしすてむ
Moretime System
日本の銀行間で24時間365日即時決済・送金ができる金融サービス。平日8時半から15時半までの即時決済サービスをコアタイムシステムとよんでいるため、それ以外の平日夜間・土曜・日曜・祝日を含めた時間に稼働するのでモアタイムシステムと名づけられた。全国銀行協会が2018年(平成30)から稼働させ、給与や賞与の振り込みを除き、1回につき1億円未満の決済・送金が可能である。企業にとっても、資金を効率よく活用できる利点がある。当初、大手銀行や地方銀行など504機関の参加にとどまったが、2021年(令和3)時点で信用金庫、信用組合、労働金庫、農業・漁業協同組合などを含む約1100の機関が参加している。インターネット上の電子商取引の拡大、スマートフォン決済やフィンテックの普及などで、24時間365日の即時決済が世界的潮流となっており、これに対応する意味合いがある。
世界では、イギリスが2008年にファスター・ペイメント・サービス(FPS:Faster Payments Service)とよばれる24時間即時決済システムを稼働させ、シンガポールが2014年、オーストラリアも2018年に導入。また、2017年にアメリカで即時決済システム「RTP」が、ヨーロッパでも即時決済システム「SCTInst」が、それぞれ中央銀行主導で稼働した。日本の即時決済システムは従来、平日8時半~15時半に限られ、それ以降はデータを一定時間貯めておき、翌稼働時間にまとめてバッチ処理する仕組みであった。安倍晋三(あべしんぞう)政権は2014年の成長戦略で「資金決済の高度化」を打ち出し、これを受け全国銀行協会は全国銀行データ通信システム(全銀システム)を更新し、従来のコアタイムシステムとは別のモアタイムシステムを稼働させた。モアタイムシステムは日本版FPSといえる。
[矢野 武 2021年7月16日]