略称労金。労働金庫法(昭和28年法律227号)に基づく労働組合、生活協同組合その他労働者の団体が協同して組織、運営する労働者専門の金融機関。労働金庫は、労働者の資金が銀行などを通じて資本に奉仕する弊害を排し、労働者の生活福祉や経済的地位の向上に直接その資金を生かすことを目的としている。事業は内閣総理大臣および厚生労働大臣から認可を受け、金融庁ならびに厚生労働省の監督を受けている。その事業は利潤の追求を目的とせず、労働者の福利共済活動の一環として組合員全体に奉仕する非営利活動が原則とされ、特定団体の利益実現を目的とした金融を行うことのない中立的な立場が定められている。
労働金庫の設立は、労働組合などを単位に団体加入制を原則として出発した。しかし中小企業や未組織労働者が多い日本の現状から加入基準を緩和して、現在では団体の構成員でない一般勤労者の加入も認められている。労働金庫のおもな業務は会員とその構成員(間接構成員)、および一般勤労者から預金を受け入れる一方、事業資金、生活資金、教育資金、住宅資金などの貸出や、各種共済事業への貸出も行っている。また1981年(昭和56)には労働金庫法の改正が行われて、手形や小切手を決済する国内為替(かわせ)取引、会員外預金、会員外貸出や勤労者財産形成促進法に基づく財形貯蓄なども扱うようになり、業務範囲が一段と拡大した。
労働金庫の中央機関として全国労働金庫協会と労働金庫連合会が設立されている。前者は各労働金庫の経営指導ならびに連絡・調整を行い、後者は資金調達、資金の需給調整、運用、内国為替、国債販売、確定拠出年金などの業務を扱っている。
1996年(平成8)5月、全国労働金庫協会は日本版金融ビッグバンに対応した「21世紀への改革とビジョン」を策定した。このビジョンは、原則として労働金庫の設置や事業活動において都道府県を単位に実施してきたこれまでの方針を改め、労働金庫の合併など広域化を図って「日本労働金庫」(仮称)を創設することや、内外の経済環境の変化に対応して経営体制を確立することを目的にしたものであった。また同年11月には基本理念を見直し、「労金は働く人の夢と共感を創造する協同組織の福祉金融機関」と位置づけた。これにより東京、神奈川、千葉など関東地方1都7県の労働金庫は合併して中央労働金庫に、京都、大阪、兵庫など近畿地方2府4県は近畿労働金庫となるなど統合化が図られた。また会員や構成員に対する金融サービスの拡充を進め、現在では確定拠出年金の取扱いや、コンビニエンス・ストアなどに設置されているATM(現金自動預金支払機)が利用できるセブン銀行との提携、育児支援ローン、「NPOバンク」など市民金融の支援など事業領域を広げている。なお、2008年6月末現在の全国の労働金庫数13、間接構成員数983万3291人、店舗数670、また2008年7月末現在の出資金904億4600万円、預金総額15兆6656億2100万円(譲渡性預金も含む)、貸出金総額10兆2921億3700万円となっている。
[吉田健二]
労働組合,消費生活協同組合,その他の労働者の団体によって設立された協同組織の金融機関。労金と略称する。1953年に〈労働金庫法〉が公布されるまでは,信用協同組合の一種として存在したが,制定後は労働金庫法に依拠することになった。
労働金庫の事業は大蔵大臣および労働大臣の免許を受けなければ行うことができず,監督もまた両大臣が行う。金庫を構成する団体の行う福利共済活動のために金融の円滑化を図り,その健全な発達を促進するとともに労働者の経済的地位の向上を図ることが目的とされている。会員資格は労働組合,消費生活協同組合,同連合会,国家・地方の公務員団体,健康保険組合,共済組合,労働者で構成する団体,同連合団体など労働者を主体として組織される団体であるが,労働者個人も会員になることができる。しかし,個人会員は一種の準会員であって,労働金庫への出資,事業の利用,配当を受ける権利はあるが議決権は有しない。労働金庫は協同と民主性の原理(ロッチデール原則)に立脚し,自立共助と連帯性を重視する会員全体に直接奉仕する政治的に中立な金融機関である。また営利を目的とした事業を行うことはできない。事業の中心は会員の預金および定期積金の受入れ,会員に対する資金の貸付け,会員のためにする手形の割引,そのほか内国為替取引,有価証券の払込金の受入れまたはその元利金もしくは配当金の支払の取扱い,国・地方公共団体その他営利を目的としない法人の預金の受入れ,員外預金および定期積金の受入れ(当該労働金庫の預金。定期積金の総額100分の20以下),員外貸付け等である。内国為替取引,員外預金,員外貸出しについては1981年に公布された〈中小企業金融制度等の整備改善のための相互銀行法,信用金庫法等の一部を改正する法律〉のなかで労金法の改正も行われ,業務範囲が広げられた。
労働金庫は労働者の生活の権利を守る争議中の生活資金や闘争資金の融資から,他方,労働者の日常消費資金や住宅資金を提供して労働者の経済的地位の向上を図っている。
中央機関として1951年に設立された全国労働金庫協会があり,個別労働金庫の指導,連絡,調整を行い,55年設立された労働金庫連合会は労働金庫間の資金の需給調整,余裕資金の運用,資金の集中決済,財形業務,機械化促進の指導を行っている。現在の規模は,労働金庫数47,店舗数674,出資額666億円,預金額9兆4029億円となっている(1996年3月末)。
執筆者:森 静朗
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