モバイル決済(読み)もばいるけっさい(英語表記)mobile payment

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モバイル決済」の意味・わかりやすい解説

モバイル決済
もばいるけっさい
mobile payment

スマートフォン(スマホ)などの携帯端末と、専用読み取り機(リーダー)を通じて情報を送受信し、代金、利用料、運賃などの支払いをする電子決済サービスの総称広義非接触型ICカードを利用した電子決済も含まれるが、スマホを利用した決済をさす場合が多い。スマホ決済やモバイルペイメントともよばれる。

 利用者は電子マネーやクレジットカードなどの情報を、あらかじめスマホに登録し、店舗のリーダーにスマホをかざすだけで代金の支払いができる。仕組みは従来の非接触型ICカードを利用した電子決済と同じで、スマホのICチップなどが認識されると、記録されている口座情報などの決済情報を読み取り、サービスを提供する事業者のサーバーで最終的に決済内容が認証される。決済時点に着目し、(1)事前入金して決済に使うことが多い電子マネーのような前払い方式、(2)QRコードデビットカードなどで預貯金口座からリアルタイムで引き落とす即時払い方式、(3)クレジットカードのような後払い方式、の三つに大別される。統計・調査データサービス大手のスタティスタによると、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行で、世界のモバイル決済取引額は2020年に2兆ドルに達し、2025年には4.6兆ドルを超える見通しである。中国、アメリカのほか、銀行口座が普及していないアフリカ、アジアなどで急速に広がっている。

 モバイル決済システムは、近距離無線通信(NFC)の専用ICチップを搭載したNFC型と、スマホにインストールしたアプリケーション(アプリ)を利用するアプリ型のほか、自分の銀行口座からスマホで即時送金できる銀行振込みシステムや、携帯電話料金に加算されて請求されるキャリア決済などさまざまな形態があり、技術革新が目覚ましい。日本のNFC方式では、FeliCa(フェリカ)方式が定着し、Suica(スイカ)(JR東日本)、楽天Edy(エディ)(楽天Edy)、WAON(ワオン)(イオン)などの利用者が多く、アプリ型では、決済情報をQRコード(二次元コード)を通してやりとりする利用が急増しており、PayPay(ペイペイ)(ソフトバンク・Zホールディングス)一強の状況にある。2023年から、全銀システムをスマホ決済事業者へ開放し、異なるスマホ決済アプリ間での直接送金が可能となる。銀行振込みシステムはインド、スウェーデン、デンマークなどで普及し、日本でも2022年(令和4)、メガバンクが主導し、個人間の少額送信サービス「ことらCOTRA」が稼働した。

[矢野 武 2022年12月12日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android