電子マネー(読み)でんしまねー(英語表記)Electronic Money

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電子マネー」の意味・わかりやすい解説

電子マネー
でんしまねー
Electronic Money

従来からある硬貨紙幣という物理的な「通貨」ではなく、ネットワークやICカードなどを使って電子的に通貨に相当する機能を事業者が提供する私製貨幣(代用貨幣)である。

 電子的に通貨のやりとり(支払いと受取り)ができるという意味では銀行での振込みやクレジットカードも広義では電子マネーと考えることもできるが、狭義ではプリペイド型の支払いシステムをさすことが一般的である(ただし、NTTドコモのiD(アイディ)、Visa(ビザ)のVISA TOUCH(ビザタッチ)、JCBのQUICPay(クイックペイ)のようなクレジットカード機能の拡張としてのポストペイドシステムも電子マネーとよばれることがある)。

 電子マネーの具体的な例としては非接触型ICカードを使うSuica(スイカ)、ICOCA(イコカ)、PASMO(パスモ)などの交通事業者系のもの、nanaco(ナナコ)、WAON(ワオン)などの流通事業者系のもの、Edy(エディ)などの独立系のものに分かれる。また、プリペイドカード店頭などで購入し、そのカード番号を入力する方式によるインターネットでの決済を目的としたものとして、WebMoneyウェブマネー)、BitCashビットキャッシュ)などがある。

 さらに、非接触型ICカードを使う電子マネーは携帯電話機にその機能が包含されるようになってきている。これを総称して「おサイフケータイ」とよぶ。携帯電話機にこれらの機能がついていると、事前にマネーをチャージすることが携帯電話機で簡単にできる(ICカードタイプでは駅、店頭などの専用機でチャージしなければならない)。

 とくに交通系事業者での電子マネーの相互利用が始まったこと、コンビニエンスストアでの利用が可能になったことなどから、急速に利用者が増加しており、少額の支払いに対して利便性が高い。

[中島由弘]

『館龍一郎監修、日本銀行金融研究所編『電子マネー・電子商取引と金融政策』(2002・東京大学出版会)』『岩田昭男著『図解 電子マネー業界ハンドブック』(2008・東洋経済新報社)』『岡田仁志著『電子マネーがわかる』(日経文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電子マネー」の意味・わかりやすい解説

電子マネー
でんしマネー
electronic money

金銭の価値を ICカードなどに蓄積する電子情報に置き換え,商品購入の際の少額決済をするシステム。大きく分けて二つのタイプがある。(1) 現金情報をあらかじめ ICカードに記録(チャージ)し専用端末を通じて決済するプリペイドカード型。(2) デジタルコンテンツを購入するためにインターネット上のみで使われるサーバ型。(1)は金融機関の現金自動預入支払機 ATMや店頭の専用チャージャー,クレジットカードなどを利用して,一定の金額を ICカードにチャージし,専用の端末で商店での買い物や交通機関の代金の決済を行なうもので,2001年からサービスを開始した Edyや東日本旅客鉄道の Suicaなどがある。(2)はオンラインゲーム,音楽,ソフトウェアなどデジタルコンテンツを販売する業者向けに開発されており,若年層に使用者が多い。(1)に相当する電子マネーのカード発行数は年々伸びており,入金された総額も巨大な額となっている。与信機能を使った後払い方式のクレジットカードは通常,電子マネーとは区別される。(→ICカード乗車券

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android