ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モフォロ」の意味・わかりやすい解説
モフォロ
Mofolo, Thomas Mokopu
[没]1948.9.8. イギリス保護領バストランド
レソトの作家。20世紀最初期のアフリカ人文学者。バンツー諸語の一つであるソト語で作品を書いた。モリジャのミッションスクールに学び,1898年教員免許を取得。キリスト教関係の出版社で事務と校正の仕事に携わった。雇用主から文筆家になることを勧められ,作家活動に入る。1906年,ソト語の新聞に連載し始めた第1作『東方への旅人』Moeti oa Bochabela(1907)は,一青年が神を探し求めて旅に出る物語『天路歴程』を彷彿させる物語で,伝統的なアフリカ的価値とキリスト教の相克も読み取れる。第2作は『ピツェン』Pitseng(1910。ピツェンは町の名)で,ソト族(→ソト諸族)の一少年の物語や教育問題などが作者の生涯に重ねて描かれている。これらの作品はキリスト教と伝統的アフリカ社会との対比を作者独自の立場から描いたものである。1925年刊の小説『シャカ王』Chakaは,ズールー族の歴史上最も有名な王であるシャカの生い立ちや人としての苦しみ,王としての活躍を描いたもので,ソト語の古典文学とされる。英訳(1931)のほか,フランス語訳,ドイツ語訳,イボ語訳などがある。第1次世界大戦後は政界入りし,工場や農場の経営にも関与したが,人種差別政策下で事業に失敗し,貧困のうちに死んだ。(→アフリカ文学)
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