イタリア中部、ラツィオ州フロジノーネ県カッシーノの西郊約9キロメートルにある丘陵。標高519メートル。ベネディクト派修道院の所在地。聖ベネディクトゥスが529年ここに修道院を建て、ベネディクト修道会の本山となった。彼の祈りと労働の生活と中庸の精神を説いたレーグラ(戒律)が、のちに西ヨーロッパの修道生活の模範となる。彼は死後妹とともにここに葬られ、以後、信者の訪れる一聖地となった。修道院は6世紀末の破壊後、8世紀に再建され、君侯の子弟やパウルス・ディアコヌスPaulus Diaconus(720ころ―799ころ)などの文人が集い、タキトゥスなどの古典の筆写と保存が促進された。9世紀のイスラム教徒の破壊後また再建され、11世紀には院長デジデリウスDesiderius(1027―1087、教皇ビクトル3世)の時代に大バシリカなどの建築が進み、文化と宗教の一大中心地となる。のちに地震やたびたびの略奪にあい、19世紀末からは国家的モニュメントとされた。第二次世界大戦下の1944年2月15日、ドイツ軍の要塞(ようさい)に利用されるのを恐れた連合軍が大爆撃で修道院を完全に破壊した。幸運にも貴重な古典写本類はローマに移送されていて難を逃れた。修道院は戦後復興された。この修道院は22人の教皇と多数の司教を輩出した実力をもつ宗派の本山であるが、その歴史は破壊と復興の繰り返しであった。
[佐藤眞典]
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