改訂新版 世界大百科事典 「モース硬度計」の意味・わかりやすい解説
モース硬度計 (モースこうどけい)
Mohs' scale of hardness
ドイツの鉱物学者F.モースにより考案された,鉱物の〈ひっかき硬度〉を簡単に測定する器具。硬度の異なった10種の標準鉱物により成り立っている。測定する場合は,標準鉱物で測定する鉱物の表面にひっかき傷がつくか否かを確かめる。傷がつかない場合はさらに硬度の高い標準鉱物で傷がつくまで繰り返す。傷がついた場合は逆にその測定する鉱物で硬度計の標準鉱物の表面に傷がつくことを確かめてその鉱物の硬度とする。これは同一硬度の場合は先端を用いれば平面にひっかき傷をつけることができるからである。また2種の硬度の中間にあたれば下の硬度に0.5を付してその鉱物の硬度として示す。鉱物によっては,結晶の方向によって硬度の異なるもの(硬度の異方性が大で二硬石とも呼ばれる藍晶石が有名)もあるので注意する必要がある。
モース硬度と標準鉱物名は次の通りである。1.滑石(タルク),2.セッコウ(石膏),3.方解石,4.蛍石,5.リン(燐)灰石,6.正長石,7.石英,8.黄玉,9.鋼玉(コランダム),10.ダイヤモンド。
ただし,この値は定性的なものであり,絶対値では相違がある。硬度1の滑石から硬度9の鋼玉までは両者の値は大略一致するが,硬度10のダイヤモンドでは滑石のひっかき硬度の約40倍の値が得られる。
執筆者:湊 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報