日本大百科全書(ニッポニカ) 「モーフォシス」の意味・わかりやすい解説
モーフォシス
もーふぉしす
Morphosis
アメリカの建築設計事務所。1972年、トム・メインThom Mayne(1943― )を代表、マイケル・ロトンディMichael Rotondi(1949― )をパートナーとしてロサンゼルスで設立された。40名近くのスタッフを抱える。主宰者トム・メインは68年南カリフォルニア大学卒業後、78年ハーバード大学GSD(大学院大学デザイン・コース)を修了している。ロトンディは75年南カリフォルニア大学卒業。その後、アメリカ、ヨーロッパの建築系大学で教鞭をとり、ロト・アーキテクツを91年に設立、モーフォシスを脱退。現在、カリフォルニア大学建築学部主任教授。また、2人は1972年に南カリフォルニア建築大学(SCI-arc)を創設し、さまざまな建築家を輩出したことでも知られる。
モーフォシスはロサンゼルス市を中心に、個人住宅、集合住宅、ショップやレストランなどの商業施設、また大学キャンパスを初めとする公共建築の設計を手がける。いずれもディコンストラクション(脱構築)建築のデザインの特徴を表している。すなわちモーフォシスの建築は、モダニズム建築のような機能性追求とスタイルやストラクチャーの純化を目指すことなく、複合的で対立的な要素を共存させる。そしてさまざまな要素を包含する曖昧な平面やボリューム構成をもつが、それは利用者との間に出来事を生じさせ、多様な使われ方を誘導するのである。
80年代には現代美術のテイストを建築のなかに取り込むことに成功した。72マーケットストリート・レストラン(1985、ロサンゼルス)では鉄のオブジェ建築は空間と衝突し、ケイト・マンテリーニ・レストラン(1987、ロサンゼルス)ではオブジェは建築と一体化し、レオン・マックス・ショールーム・ロサンゼルス(1986)やCCC(シーダーズ・サイナイ癌センター。1988、ロサンゼルス)ではオブジェはギャラリーのような空間をひき立てている。それらの作品は無骨だが繊細なディテールを持つ、塗装されていない鉄のオブジェのような窓枠や家具が特徴的で、取り巻く建築空間は、アートギャラリーのような緊張感をもった空間に変化させられている。
大阪国際花と緑の博覧会(1990)にフォリー(小さな建築物)を設計して参加したのと前後して、モーフォシスは美術活動へと踏み込む。彼らが設計の過程でつくる模型は腐食した金属でつくられ、オブジェとして表現されている。単に建築設計のプロセス、クライアントへの説明のための副産物ではなく、それ自体が表現となっている。
最新作、ハイポ・アルプ・アドリア・センター(2002、オーストリア、ケルンテン州)やダイヤモンド・ランチ高校(2002、カリフォルニア州)では建築全体のボリュームがダイナミックに複合化されている。
そのほかの主な作品としては、SHRパーセプチュアル・マネージメント社インテリア(1988、アリゾナ州スコッツデール)、サンタワー(1991、韓国ソウル)、ブレイデス邸(1995)、ASEデザインセンター(1997、台北)、アジアン・グリル・ツナミ(1999、ラス・ベガス)、インターナショナル小学校(1999、ロング・ビーチ)、トロント大学大学院学生寮(2000)がある。
[鈴木 明]
『Morphosis Buildings and Projects (1989, Rizzoli, New York)』▽『Morphosis Connected Isolation (1992, ADA Academy Edition, London)』