ギャラリー(読み)ぎゃらりー(英語表記)gallery 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギャラリー」の意味・わかりやすい解説

ギャラリー
ぎゃらりー
gallery 英語
Galerie ドイツ語
galerie フランス語

本来の意味は、建物の外側歩廊回廊をいうが、アレクサンドロス大王の時代に、収集した美術品をそこに並べたところから、美術品の展示場をいうようになった。正確にはart galleryあるいはpicture galleryである。今日でも、ギャラリー天井桟敷(てんじょうさじき)とか、さらに見物人傍聴人などの広い意味で用いられているが、美術の世界では、この世界特有のことばとなっている。通常それは美術館内の各室、もしくは美術商の展示スペースを意味するが、ロンドンワシントンのナショナル・ギャラリーのように、大小美術館の名称そのものとなっているところもあり、それはアレクサンドロス大王時代の用法である。

 19世紀末に近代的な意味での画商が成立して以来、そこにはギャラリーが設置されて、取扱い作家の作品を絶えず展示する習慣が生まれ、社会的な意味をもつに至った。作家にとっては作品発表の不可欠な場所であり、愛好者にとっては作家を知る重要な場所となり、そこからさまざまのドラマが生まれ、歴史がつくられた。

 日本でも、江戸時代寛政(かんせい)期(1789~1801)に京都東山で書画会が催されたのを先駆例として、美術展示の必要が徐々に高まった。東京に常設的な展示場が設けられたのは20世紀初頭の1903、04年(明治36、37)で、その後、大正初年にかけて、近代的な画商が誕生するとともに、ギャラリーも設けられた。ただし、ギャラリーを「画廊」と訳すようになったのは大正10年代である。

 多くの画商は画廊をもつが、そうでない業者もある。反対に画廊を営むが美術品売買をしない業者もある。

瀬木慎一

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギャラリー」の意味・わかりやすい解説

ギャラリー
gallery

建築用語。 (1) 西欧の世俗建築における部屋と部屋を結ぶ廊下の機能を兼ねる長大な部屋。催し物や娯楽,絵画・彫刻の展示に用いられたことから,(a) 娯楽を目的とする空間,(b) 絵や彫刻を鑑賞するための通廊や広間,(c) 美術館や画商の店,などの意味が生れた。 (2) 大ホールに接合したバルコニー。祭りや宗教儀式の際に楽隊,合唱隊をおいたり,聖堂では聴衆を説教台近くに収容するために,2階部分から突き出して設置。劇場の場合は舞台を馬蹄形に囲む水平の張出し席を数層に重ねた客席部分をさす。 (3) ゴシックの聖堂建築の側廊の上階で身廊に対して開いている部分。 (4) 建物間をつなぐ屋根におおわれた通路部分。たとえば道路に沿う列柱廊や修道院の回廊など。

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