改訂新版 世界大百科事典 「ユバ2世」の意味・わかりやすい解説
ユバ[2世]
Juba Ⅱ
ローマ帝政期のマウレタニア王。在位,前25-後23年ころ。生没年不詳。ヌミディア王ユバ1世Juba Ⅰの遺子。捕虜としてローマで養育され,オクタウィアヌス(アウグストゥス)の側近となってローマ市民権を獲得。オクタウィアヌス登極後,その北アフリカ平定計画の一環として従来の土着王権に代わってマウレタニア王位に就けられ,ガエトゥリア(ヌミディア南方)をも支配した。アントニウスとクレオパトラの娘クレオパトラ・セレネKleopatra Selēnēを妻とし,ローマ風の首都カエサレア(現,アルジェリアのシェルシェル)を建設,ギリシア・ローマ文化導入と産業振興(染料等)に努めた。しかし,この政策は結局,ベルベル(マグリブ原住民)の社会,文化,経済を破壊するものであり,とくにガエトゥリアでは激しい抵抗に直面,ローマ軍の出動によりようやく鎮圧した(後6)。彼はまた学者としても有名であり,アフリカなどの地誌,歴史書,文学論など多くの著作を残したといわれるが,現存しない。
執筆者:栗田 伸子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報