旧ソビエト連邦と中東欧諸国の市場経済への移行を支援する目的で設立された国際金融機関。欧州復興開発銀行。略称EBRD。欧米諸国などの出資により1991年4月に発足した。本部はロンドンで、サンクトペテルブルグ(ロシア)、ブカレスト(ルーマニア)、イスタンブール(トルコ)、ウランバートル(モンゴル)などに事務所を置く。初代総裁はフランスのジャック・アタリJacques Attali(1943― )で、2014年時点で第6代総裁をイギリスのスマ・チャクラバルティSuma Chakrabarti(1959― )が務めている。2014年8月時点で64か国とヨーロッパ連合(EU)、ヨーロッパ投資銀行(EIB:European Investment Bank)の2機関が出資しており、出資金は約296億ユーロ。最大の出資国はアメリカ(10.1%出資)で、設立当初からの出資メンバーである日本はイギリス、フランス、ドイツ、イタリアと並ぶ第2位(8.6%)である。各国の出資金のほか、債券発行で市場からも資金調達をしており、日本でも外貨建てヨーロッパ復興開発銀行債が発行されている。
主要業務として支援対象国への融資、出資、保証、技術支援などを行い、市場経済への移行を促している。支援国のマクロ経済や市場経済などの状況を調査し、国別支援戦略(CAS:Country Assistance Strategy)を策定し、支援の重点分野を決める。市場経済移行への貢献度や周辺環境への影響を考慮しながら、支援プロジェクトを決定する。プロジェクトは支援受入国側が実施し、ヨーロッパ復興開発銀行はその進捗(しんちょく)状況などを点検(モニタリング)する。支援は民間への投融資が中心で、国有企業の民営化などの公的部門への投融資は全体の40%以下に抑えるとの目標が設定されている。2014年5月時点で35か国に支援を実施している。また中央アジアで市場経済への移行が遅れた国々への支援にも力を入れているほか、2010年末からアラブ・中東地域で広がった反政府民衆運動「アラブの春」を踏まえ、エジプト、ヨルダン、チュニジアなどの地域へも支援を拡大している。
[矢野 武 2015年1月20日]
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